リック・フレアー自伝備忘録4

リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン
いよいよリック・フレアーがプロレス界を代表するスターとして台頭し始めます。仕事仲間には子供のころの憧れ、"アメリカンドリーム"ダスティ・ローデスもいるわけですが、わがままで考えの古臭い上司としてフレアーに立ちふさがるわけです。ハーリーレイスやダスティといった憧れたちと同じ立場に立つことで、新たな苦労が始まってくるようです。また、これから後の章ではレスラーに対する辛い批評がどんどん増えてきます。このころからフレアーもブッカー*1としての役割が与えられてくるわけですから視点が回りに向かざるを得なかったということでしょうか。ブッカーにはなれなかったミックのレスラーとしての視点と比べては面白いかもしれません。

12章

いよいよダスティとの対面です。
ダスティの提案する勝負はいずれも古臭いダスティ・フィニッシュと呼ばれる決着パターンで固定されていたようです。権力のあるダスティはこうした古臭い方法を押し付け、なおかつダスティに従ったジム・クロケットクロケットプロを衰退へと導いていきます。フレアーはなんともやりきれない気持ちだったでしょうね。最初はダスティの弟としてデビューしたかったほど憧れていたスターなんですから。やっとダスティと一緒に仕事ができるまで登りつめたと思ったら、ダスティは古い考えを持つ政敵となり、信頼していたジム・クロケットもダスティ側についたんです。ストレスたまるでしょうね。そこまで詳しく語っていませんが、キャリアの中でもつらい時期ではなかったのではないでしょうか。
あと、アーン・アンダーソンとタリー・ブランチャードが冷遇されているのを嘆いていますね。この後何度かアーンはもっと評価されるべきだという文章が出てきます。本当にフレアーとアーンの間の信頼と絆は深いようですね。またアーンのスパイン・バスターを見てみたい気になります。

13章

NWAでのライバルを称える章ですね。
リッキー・スティムボート大絶賛です。あきらかに他のレスラーと割かれているページも言葉も違います。さすがフレアー最大のライバル。でも奥さんには苦言をもらしています。真面目なリッキーの奥さんですから、フレアーみたいなタイプは最も嫌われてしまうのではないでしょうか。リッキーの役の幅の狭いベビーフェイスぶりにも苦言を呈していますが、フレアーだってキャリアの大部分をヒールとしてすごしていると思うのですが…。
リーファンクの仕事に対する情熱は本当に賞賛に値します。プロと馬鹿の境界線をさまよっているともいえますが。膝の怪我に負けず、いつまでも現役でがんばってほしいです。テリーファンクはリングで死ぬんでしょうね、きっと。

14章

最も重要な章のように思えます。
文章からみてもここでフレアーはキャリアでもっともつらい時期を迎えていたようにみえます。衝撃的なほど弱弱しいフレアーが描かれています。フレアーのキャリアを中途半端に知っている人はフレアーの精神的な強さがわかっているだけに、この章は衝撃的ではないのでしょうか。
さらに、ここではついにミック・フォーリーの著作への反論が記されています。
ミックの「フレアーはブッカーとして微妙」という言及にはあまり触れずにミックのプロレススタイルへの反論が延々と述べられます。だんだんハードコアプロレス自体への反論に発展してしまい、かなりキビシーことになってます。どさくさにまぎれてサンドマンも滅茶苦茶いわれていますね。僕はフレアーのいうレスリング重視のプロレスもミックのハードコアプロレスも大好きなんですがね。なんとか仲良くやっていただきたいものです。
昨今はハードコアなプロレスがWWEでは激減していてちょっと寂しいと思います。今年はECWが復活しそうだし、イスやハシゴが以前のようにじゃんじゃん出てきてほしいところですね。
このころからWCW時代です。
この章から僕でも知ってる名前がどんどん出てきますね。
ジム・ロス、ジム・バーネット、ケビン・サリバン、ジム・コルネットがこの章で初登場です。ジム・コルネットWCWで働いていたんですねえ。この人はインタビュー見るといつも楽しそうですがWCWでは思いっきり政治抗争に巻き込まれていますね。
WCWのブッキング委員会の様子が描かれていてものすごく興味深いです。メンバーの顔ぶれを見るとほお、って思いますよ。初期WCWのブッキング委員を仕切っていたのはジム・ハード。この章の主人公です。アイデアは最悪でプロレスも全然知らないのに権力をもつという、たちの悪いことになっています。でも、そのためにみんな委員会に出席したがらなかったって、そりゃだめでしょう。声の大きい人が場を仕切ってしまうのは未熟な組織の典型に見えるのですが。とりあえず出席して反対意見を表明することはできると思うのですが。自伝読むとジム・ハードに対して委員会のメンバーの過半数がブツブツ不満をためていたようです。哀れフレアーは髪を切られ、自信も失ってしまうんです。フレアーも委員会のメンバーだったようですが。
あと、スティングも登場しました。Woooooo!

15章

フレアーはとうとうWWFに移籍してしまいました。
意外とハルク・ホーガンに対しては高評価ですね。
10分以上試合が続かないことを批判していますが、それってレスリング重視のプロレスからはレスラー失格ということではないのでしょうか。
ランディ・サベージが実はリハーサルを何度もやらなきゃ安心できない小心者だったということが暴露されています。フレアー観では試合はアドリブの部分が増えれば増えるほどいいらしいです。そういえば試合結果が決まったのは試合の一時間前だ、とか自慢する部分が多いですね。確かに観客の反応に合わせたり、アクシデントにそなえなきゃならないプロレスでは、アドリブは重要なことなのかもしれません。
エリザベス観がガラガラと崩れ去る…。
ブレット・ハート批判です。彼はレスリング史上最もテクニカルなレスラーといわれているんですが、意外なことにレスリングスタイルへの批判です。僕は数試合しか見てないからなんともいえないんですが、フレアーの批判はよくわかりません。

16章

フレアーは再びWCWに戻ってきました。
鬼才ビル・ワッツがブッカー職に就いていましたが、豪快でフランクなワッツは役員がみんな背広を着ているWCWでは馬が合わなかったようです。結局、人種差別発言がきっかけでワッツはWCWを去ります。内容を見ると実際に人種差別をしたわけじゃなく、別の意図をもっての発言でしたが、明らかにワッツが人種差別擁護者であると見られてもおかしくない言動です。才能はあっても大組織のトップには就けないタイプだったようですね。
そして、ついにプロレス三国時代、第二の軍師、エリック・ビショフの登場です。さすがに高評価。
そして、ダスティ・ローデスが再びブッカーに就きます。フレアーはまたブツブツいっています。
NWA王座とWCW王座が両立することの混乱が描かれていますね。ちなみに両王座の流れを汲んでいるのがRAWの王座。すなわち、世界ヘビー級王座です。スマックダウンにはWWF王座の流れを汲んだWWE王座があります。つまり世界三大タイトルのうち二つをWWEがもっているわけで。おお、さすが世界最大のプロレス団体。ちなみにのこりのAWA王座は新生ZERO-ONEが持っているって、昨日あたり話題になっていましたね。
父としてのフレアー。子供とのコミュニケーションを犠牲にしてきたことを嘆いていますね。高価な贈り物をしても突っぱねられる姿が哀愁を誘います。

*1:現場監督