ザ・クラフト(1996)
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
- 発売日: 1998/10/23
- メディア: DVD
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
◆ストーリー
お父さんの仕事の都合で転向することになったサラ(ロビン・タニー)。新しい環境で上手くやっていけるか不安だったけど、可愛いサラには早速男がよってくる。アメフト部のクリス(スキート・ウールリッチ)*1だ。だけど、クリスはセックスを断っただけで、翌日酷いウワサを学校中に流す最低野郎だった。「クスクス、あの子、出会った男とすぐ寝るんだって、クスクス」「おまけに下手くそなんだって、プププ」
なんてやつ、最低!
しかし、そんなサラにも友達は出来る。学校でつまはじきにされてるゴスっ子三人組だ。三人とも個性的なので名前を出しておくと、リーダー格のナンシーにリアル・ゴスのフェイルーザ・バルク、背中の火傷にコンプレックスを持つボニーにネーヴ・キャンベル*2、ほとんど黒人のいないロスで差別されまくってる黒人少女ローチェルにレイチェル・トゥルー。このとき30歳。若いものには負けんぜ、イェー!
この三人組、個性の強すぎるゴスを身に纏い、つっぱってるだけかと思ったら、毎日毎日熱心に黒魔術の儀式を行うハードコア・ゴスだった!
そして、サラと三人組が本当に黒魔術の力を手に入れたとき、虐げられたものの憎しみは学園のヒエラルキーをも覆す!
結構珍しいゴスをメインに持ってきた学園映画。彼らは黒髪に黒服をまとい、他のコミュニティを威嚇する学園のはぐれ者。コミュニティではぐれてしまったら、逆に目立つコスチュームで自分を守るのが個性を尊重するアメリカっぽいですね。
これ、皮肉にも『ミーン・ガールズ』に似てます。『ミーン・ガールズ』で、転校生は学園最上ヒエラルキーのセレブ三人組に歓迎されるのに対し、『ザ・クラフト』は学園最低ヒエラルキーのゴスに属することになるのです。どちらもグループは同じ服装で固めているところとか、リーダーがカリスマチックな影響力をもっている(あくまでグループ内)ところとか、リーダーの元彼がヒロインにほれて、リーダーが嫉妬するとことか、共通点多い。本当に多い。
本作は学園ヒエラルキーの上位にいる連中にいじめられ、バカにされてたゴスっ子たちが、黒魔術の力を手に入れたことで増長し、復讐、いじめ、内ゲバをやらかすことで、ヒエラルキーの上位にいる子も下位にいる子も根底は大して変わらないことを喝破した点では気持ちのいい作品です。
とにかくリーダー格であるナンシーの描き方が秀逸*3。オヤジは働かず、家というか、トレイラーハウスで酒ばかり飲んでて、両親が毎日喧嘩してる絵に描いたようなホワイト・トラッシュ。寝ているところで顔に雨漏りがポタポタ落ちてくるのはやりすぎだけど、そんな彼女が現状打開に強いモチベーションを持ってるのは凄い説得力がある。ゴスっ子4人が集まって、魔術の儀式をやってるシーンがあるんだけど、そこで四人それぞれが自分の願いを魔術の力で叶えようとするのね。それぞれ自分の願いをいうんだけど、ナンシーだけは口には出さない。一人だけ願い事を胸のうちにしまっていて、心で唱えているのだ!で、その願い事というのが、なんとお金持ちになること。別に口に出しても全然恥ずかしくないよくある願い事なんだけど、ナンシーは言わない。彼女は本気なのだ!
ナンシーは家でヒステリーをおこした際、魔術が開花し、そのショックで親父が死んでしまう。で、その生命保険でナンシーは金持ちになってしまいます。これにナンシーは悲しむどころか大喜び。ここから物語の中での魔術の要素がいよいよ表面に出てくるのです。
四人が魔術を手に入れる過程はゆっくりと描かれます。いきなりポルターガイストが起きたり、脳ミソをスキャナーして頭をふっ飛ばしたりはしません。徐々にエスカレートしていくナンシーの欲望と共に膨れ上がっていく。この辺のテンポは丁寧に作られてて、うなります。盛り上がります。
クライマックスはすごいですよ。『フェノミナ』もビックリの蟲地獄です。サミュエル・L・ジャクソンも腰を抜かすヘビ地獄です。やっぱり魔術はこうでないと!いやー、楽しかった。