2000人の狂人(DVDタイトルは『マニアック2000』)(1964)

マニアック2000 [DVD]

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 南部のとある小さな村、プリザント・ヴァレー。村はちょうど100年祭の真っ最中で、ちょうど近くを通りかかった北部の若者をムリヤリ巻きこんで、飲めや踊れやの大騒ぎをしていた。巻き込まれた若者達も、色気を振りまく南部美人ダンディーな南部イケメン*1に見とれて、ついつい滞在することになってしまう。
 しかし、若者達は知らぬうちに一人、また一人と姿を消していく。不審に思った者たちは村の探索を試みた。そして明らかになった衝撃の事実!プリザント・ヴァレーは100年前に北軍の襲撃に遭い、全滅した村であった。百年祭とは、北部の人間を血祭りに上げて楽しむ、狂気の宴であったのだ!

 偉大なるスプラッター映画の始祖、ハーシェル・ゴードン・ルイスの代表作。
 ルイスは元々、ただのビデオ屋のオヤジだけあって、演出はタルイし、スプラッターも今見ると、物足りないことこの上ないんだけど、それを踏まえてもこの映画はすごい。
 それは血みどろの映画なのに、妙にのどかで能天気な雰囲気が全体に流れていること。お祭りで騒いでいるテンションと、若者をなぶり殺すテンションが全く変わらないのだ。今まさに殺されようとしている女の子に町長が一言「おとなしく祭りに協力するんだ!このために準備がどれほど大変なのかわかってるのか!?」村の人たちは心から祭りを楽しんでおり、成功に対する熱意は並々ならぬものがあることが伝わってくる。
 村の人たちは、アマチュアさんなのか、キャリアの浅い役者さんなのかわからないけど、役にはまりきれないヤケクソな過剰演技が一人一人をキャラ立ちさせている。若者を誘惑する美男美女の苦しさは『フライパン殺人』で男を誘惑する中年女性のそれに通じるものがあるし、実行委員会の二人がひどく明るくて憎めないドジっ子ぶり(でも殺人鬼)をみせていたのも味わいがあります。最高なのは、サド少年ビリー君。いつも首吊り縄を振り回しては猫を殺す非道っぷりは他の追随を許さない。
 村の住民達が終始狂ったテンションで若者に襲い掛かる絵ずらは本当にどうかしているんです。『悪魔のいけにえ』でも何の疑いもなく前向きに殺しをしていたソーヤー一家に衝撃を受けたものだけど、先駆けること10年前にルイスは狂気が常識となる世界を演出して見せたのですよ!
 ある晴れた日、バンジョーの鳴り響く牧歌的な空の下で血みどろの惨劇が繰り広げられる!子供の無邪気さと残酷さが、そのまま映画になったような出来で、いろんな意見が入り込む商業映画じゃ絶対に作れない佳作でした。

*1:二人ともちょっと歳とってるけどね。特にイケメンは腹がヤバイ!