グエムル-漢江の怪物-(2006)

■ストーリー
 漢江に突如、怪物が登場。ブルドーザーのようなバケモノで、周囲にいた住民を食い散らかし、満腹になったと見るや去っていく。ちょうど、運悪くこの現場に居合わせてしまったのがパク一家。一家最年少のヒョンソが怪物に食べられてしまった!揃ってフヌケだが、家族愛では他に勝るものなく、葬式では一族揃って涙を流すのだった。
 怪物から感染症が発生した疑いから隔離されるパク一家だが、そこへヒョンソから電話がかかる。ヒョンソは生きていたのだ!団結するパク一家。病院から脱走し、米軍・韓国政府を敵に回しながら、怪物の巣へ、無謀すぎる奪還作戦を開始する。

 面白かった!これはアタリです。
 怪物映画なんですが、もっぱら焦点は団結して戦う家族のファイティング・スピリットにあるので、ビデオで見ても十分に面白い作品だと思います(問題発言)。家族4人対怪物で勝負が成立するように作られてるので、怪物がもうやたらめったら暴力的に強いわけじゃない。ジュラシック・パークほど一方的ではないということです。
 冒頭20分の大暴れを見る限り、この怪物、恐竜よりは強そうなんですが、パク一家を見てると、なんかやってくれそうな気がするんですよね。主人公パク・カンドゥ(ソン・ガンホ)は四六時中寝てるダメ親父なんですが、この親父、無謀にも最初っから立ち向かったりしてるわけです。これが妙に勇敢でカッコいい*1。で、バス停留所の石をぶつけたりしたら結構痛がったりするから、なんかいけそうな気がする。で、なんかいけそうだから、もう一発いってみる。って、なんだか文字にしてみると猿みたいな心理なんだけど、結局この心理が家族を怪物の巣に向かわせる理由であり、観客がパク一家の無謀な冒険に違和感を感じない理由になってると思うわけですよ。うん、なんか通用しそうな適度な強さってのがいいんだね、きっと。
 
 家族の描き方ですが、やっぱり一家揃ってファイターなんですよね。非常に好戦的。ダメ人間で好戦的って、わりとよくある話なんですが、最近なかなか見なかった。みんな気性が荒いから、一家全員集まったショットが暑苦しいこと。葬式で大喧嘩してるとことか、車の中で口論してるとことか、テンション高くて面白い。で、家族愛に満ちているところが、他の国でみる映画と違う気がする。なんかあざとさを感じないのは、見慣れない韓国映画のせいなのか、家族愛というのが、韓国社会ではリアリティのあるものとして、残っているためなのかはわかりませんが。でも、主人公カンドゥがバカではないことを必至になって説明するヒボン爺さんのシーンなんか、すごくリアリティがある。結局説明が空回りで、カンドゥを労わる気持ちがちっともわいてこないところとか、すごくリアリティがある。
 そう、パク一家はみんな一生懸命なのです。もう、ものすごく一生懸命なのに笑えるっていう性格の悪い絵が随所にでてくるのが、この監督の特徴なんでしょう。タイミングも間も、悪魔のように上手い。この辺がスピルバーグと比較されたりもするんでしょうね。こういうブラックな笑いはキライじゃないです。
 ダメな家族が、危機に瀕して、一致団結するようで、できなくて。怪獣に立ち向かえるようで、なかなかうまくいかなくてっていうストレスをブラックな間と一家の熱いテンションで乗りきってる快作。ポン・ジュノの他の映画も見たくなりました。この人上手いですよ
 
ベスト・シーン
 怪物登場・葬式・一家揃って病院から脱出・駄菓子屋での一夜

*1:と、思ってるのは僕だけのような気がします