プラトーン(1986)

プラトーン〈特別編〉 [DVD]

プラトーン〈特別編〉 [DVD]

 「僕は大学でたけど、出世なんかしたくないんだ!凡庸な生活でいい。みんなと同じ生活をするために、僕もベトナムに行くんだ。」−主人公クリス・テイラー(チャーリー・シーン)
 甘い!甘すぎるぞ、インテリ小僧!戦場では得るものよりも失うもののほうが大きいぞ。てめえなんて戦場では両生動物のクソかき集めた価値しかないのだ*1
 トム・"野獣教師"・べレンジャー先生。この子を再教育してやってください!

 いやー、いい戦争映画だねー!感動して「ジョニー・デップ好きだ」って先輩に、思わず勧めてしまったよ!
 ベトナム戦争映画は数あるけれど、ここまでぐいぐい戦争という異常世界に巻き込まれた感覚を持たせる映画って、そうそうないんじゃない?アクが強いわけじゃなく、直球で勝負している感じも好きだなぁ。
 僕、この映画ではチャーリー・シーンのイメージしかなかったけど、トム・べレンジャー御大に、ウィレム・デフォーもでてたんだね。これ、今考えるとすごい豪華キャストだよ!
 トム・べレンジャー演じるバーンズ軍曹は『野獣教師』の獰猛さと『山猫は眠らない』の知的な豪胆さを併せ持つ当たり役!どちらの作品も僕の心に強い影響を残しました!今でも『ライ麦畑で捕まえて』を見ると誰かに投げつけたくなります。バーンズ軍曹はやっぱり、少し頭のネジの外れたところがカッコいいや!また観よう『野獣教師』!
 
 戦局の全体像が全く見えなくて、ひたすら戦地でアリや雨やノイローゼに悩まされる息苦しい映画です。だから、これは休日に見たの。
 映画全体に張り詰める重くて厚い空気が登場人物のプレッシャーの度合いとシンクロしていって、精神衛生上あまりよくないですね。あの有名なシーンなんて、どよ〜ん、どよ〜んですよ。
 基本的に相手をバンバン撃ち殺すよりも逃げ回ることの多い戦闘シーン。この映画は戦うことにカタルシスを感じるものじゃなくて、ひたすらパニック状況を演出してくる。銃を使うシーンも、ミライ村虐殺に、銃底での頭蓋破壊など、徹底して戦うことへの不快感に溢れているような気がします。
 略奪強盗、麻薬の他には楽しみのない戦場という空間。そんなものに命は賭けられないと、誰もが嫌がり、結果として貧乏人ばかりが集まったベトナム戦争。主人公のラストの表情は安堵と自責があるように見えます。「ベトナムでは先に死んだ奴が幸せ」。戦場で人間性を保ったまま早死にする者、戦場に染まりきった戦士となって生き残るもの。どちらも辛いですね。オリヴァーは死んでいった者の空しさだけではなく、生き残った者の苦しみも上手に描きます。ラストで主人公がとった行動の伏線ですね。