イグジステンズ(1999)

イグジステンズ [DVD]

イグジステンズ [DVD]

■ストーリー
 近未来の新作ゲーム"イグジステンズ"。それは生き物のようなゲームパッドからプラグを直接人体につなぎ、そこから体感できるリアリティある世界を冒険するもの。ゲーム会社宣伝部のテッド・ピカール(ジュード・ロウ)はひょんなことから開発者のアレグラ・ジェラー(ジェニファー・ジェイソン・リー)と一緒にイグジステンズの世界に飛び込むことになる。

 なんだなんだ、このゲーム。やってて面白そうじゃないぞ。
 プレイヤーが決まったセリフか行動をとらないとゲームが進まないなんて、ふるいアドベンチャーゲームみたいですね。別に何かと闘ってるわけでもなく、ぼんやりと状況に身を任せてるだけ。イグジステンズの命じることに従い続けるって、主体的じゃないよ!なんで、ジェニファー・ジェイソン・リーはあんなに狂ったようにゲームをやりたがってるんだろう?
 それに、このゲームはプレイするためにスティーブ・ブシェミに穴掘られなきゃいけないから大変だ。ブシェミに穴掘られてから新たな世界に目覚めるんだから、やっぱりこれは凄いゲームだ。
 
 町山さんの『<映画の見方>がわかる本 80年代アメリカ映画 カルト・ムービー編』のビデオドロームの章を読んだけど、やっぱりよくわからない。支配からも革命からも脱却した進化?進化後が切り取られた『ビデオドローム』だと、既存の秩序もカウンター・アクションもぶち壊すアナーキーな印象を受けます。進化ってあるのかな?受動的な主人公が、進化が可能なのかな?
 本作でもゲーム秩序と、自由派の戦いが繰り広げられますが、主人公はひたすらに受身。ゲームから押し付けられる人格にそのままのっかる様は、観ていてそんなに爽快なものでもないです。後半になるにつれ、結構アナーキーに活躍する主人公ですが、『ビデオドローム』のような現実とヴァーチャル・リアリティの倒錯、受動的な感覚、アナーキーな筋立てまで結構似ている点が多いんですが、終わりがしっくり来ない。進化というより、麻痺した現実感を楽しむようなエンディングですよ。ゆがんだ現実をどう捕らえていいのかわかんない。それがクローネンバーグの狙いなのかな?よくわかんないけど。
 何かに所属しているわけでもない無思想無宗教だからこそ、ナニかを破壊しうる圧倒的なパワーがあるんだっていうクローネンバーグの立ち位置が『ビデオドローム』よりもわかりやすいです。
  
 ゲームポッドの造形はステキですねぇ。誤って叩き壊したシーンなんて、子供がトラウマになりそうですよ。現実にあったらまずプレイしたくない製造工程も悪趣味でいい。プラグの差し込み方もセクシーですね。
 プレイヤーと管でつながれたゲームポッドはへその緒でつながった胎児みたい。だのでポッドのプラグインは妙にセクシーですが、クローネンバーグなので、グロってきます。
 ゲームポッド破壊!グチャ!ベチョッ!ネチャッ!
 ボディー!僕はアニマルじゃないよ!
 ジェニファー・ジェイソン・リー&ジュード・ロウっていうのも面白いカップルだけど、ジェニファーはジュード・ロウに負けじとセクシーでしたよ。