ガタカ(1997)

ガタカ [DVD]

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 主人公、ヴィンセント(イーサン・ホーク)はカーセックスで産まれ、弟のアントンは研究所の遺伝子操作で産まれた。ヴィンセントは神の運命に従うという両親の希望に沿った形で生まれ、神からは神経衰弱と近視と心臓疾患、そして30年の余命を授かった。遺伝子研究が進んだ近未来では、産まれた時点で寿命と死因まで予測できるのだ。弟のアントンは運命に従った後悔によって産まれた子供だった。
 ヴィンセントは宇宙に魅せられた。遺伝子科学という信仰からはじき出された息苦しさからだろうか。しかし、ヴィンセントにとって、宇宙飛行士までの道のりは特に優生学に支配された険しいものであったのだ。宇宙局「ガタカ」で清掃員として働くヴィンセントは、毎日の血液検査、血圧検査で徹底的に選別されていく飛行士を見て、宇宙までの道のりの長さを嘆く。
 「遺伝子科学が夢を阻むなら、逆に遺伝子科学を利用して夢を掴んでやる。」
 ヴィンセントはジェロームジュード・ロウ)という挫折によって社会的に抹殺されたエリートに成りすますプログラムに参加した。
 ジェロームの優秀な遺伝子は「ガタカ」で歓迎される。ジェロームになりすましたヴィンセントの木星行きは約束されたように思えたが。。。

 スポ根でしょう、これ。
 展開が仰々しくなく、むさくるしくなく、近未来の美術に面白さがあるので、多くの支持を集めた部分はあるでしょうが。。。スポ根でしょう。
 自分の夢と、執念を突き通すために、自分を偽らなければならないという葛藤はストレートに僕の心に響いてきます。熱い、熱いよ、ヴィンセント!
 ヴィンセントの執念は人間離れしているわけですが、神々しく演出されているので、心を打ちます。
 遺伝子にはのらない不屈の闘志という才能。これは周囲の人間を戸惑わせます。そして戸惑いが羨望や信仰に変わるとき、ヴィンセントは自らの才能を自覚するのでしょう。
 体力も知能もなく、周りにバカにされた醜いアヒルの子は最後に空を飛ぶのです。
 
 ヴィンセント君、がんばりすぎで少々人間味に欠けるところがあるんですが、やーっぱり、認めたくないけどジュード・ロウ演じるジェロームがいい味出してるんですよ。遺伝子科学信仰社会の恩恵を最も受けるはずだった男が、逆にそこに縛り付けられるという苦悩。開放への切望。ヴィンセントへの信仰。わかる、わかるわぁ。
 なんでスーパーマンのジェロームに感情移入の余地があるかというと、活躍してた頃の面影なく、ひたすら やさぐれているからでしょう。鉄人ヴィンセントもカッコいいけど、ヴィンセントの神々しさは間違いなくジェロームによって引き立っています。
 
 バランスは夢をかなえるヴィンセントのカタルシスにジェロームの哀愁がいい塩梅に組み合ってていい感じです。ようやっと『トゥルーマン・ショー』観たいなって気になってきた。