祗園の教訓

祇園の教訓―昇る人、昇りきらずに終わる人

祇園の教訓―昇る人、昇りきらずに終わる人

 昨今の日本はサービス業の社会だという認識があります。昔聞いた広告業界の人の話で「ぶっちゃけ、各会社の商品には大した差なんてない」という言葉がでてきたのを思い出しますが、そこでサービスが付加価値となり、競合他社への差になっているというのが現状なんでしょう。でも、サービスってそんなに差が出るものなのかな?
 差はでるんです。サービスは顧客対応に絞ったところでも大きな差は出ます。でないと、この本は売れないでしょう。各界一流の人間に一流のおもてなしを提供する花柳界。中でも売り上げナンバーワンを長年保持し続けた一流の芸妓さんが応対、接待、会話、気配りについて語ってくれるのですが、祗園甲部の特殊な世界観の他は特に目新しいお話はなし。客には誠実素直に向き合おうとか、そんなの。峰子さんの高いプロ意識とプライド、そして距離感と場の空気をつかむ気遣い、気配りの効く敏感さが他の芸妓さんとの差になってる気がします。3年前の話題を記憶とか、相手の名前を直接聞かずに覚えるとかいわれると、さすが芸妓さんというのはすげぇと思わされます。う〜ん、僕は峰子さんみたいにはなれねぇ。
 まぁ、この本は「相手に好感を与える接客はこうあれ!」と全面に押し出したビジネス書ではなく、芸妓さんの考え方や、文化を楽しむ部分も大きい一般書ですから、生き方の参考にしようと思うとアレなんですが、1時間の特番を観る感覚だといい按配に満足できます。
 
 一流の人の生き方とかは割とどうでもよかったかな。著名人の思い出を振り返る第一章では、相手を立てまくる上品な文体で、つまらないというか「やっぱり京都の人は裏表がある。怖いなー」という印象を抱かざるを得なかったですよ。後半に進むにつれ、匿名が増え、毒がでてくるので盛り上がってきます。
 京都の人は裏表があるといわれるが、そうでもないと峰子さんは指摘してますが、峰子さんが特別に正直な人じゃないのかなという思いはあります。で、それは峰子さんが素直で真面目で誠実だからこそ正直に生きていけんじゃないのかなぁなんて。アクの強そうな「一流の人たち」相手といつも向き合ってると、やっぱり裏表のある人間になるだろーと思っちゃいますがね。
 
 で、最大の問題はこの本、僕が読むような類のモノではないのに、なんで読んじゃったのかということです。正直なところ、読後感は「ふ〜ん」といった感じで、特に感想なくて、文章すごい書きづらかったですよ。敢えてがんばって書いてみたけど、やっぱり何で読んだのかよくわからず。芸妓のイメージアップが峰子さんの本来の目的なんだろうけど、それがために内容全体が立派で清潔でアクがあまりなくて*1、僕好みじゃなかったです。。。

*1:峰子さんは時折お座敷で三枚目を演じるらしいですが、そこの内容があまりにもあんまりで、これで本当にお座敷が盛り上がるのか興味津々ではあります。僕の目って斜だねぇ。