双生児−GEMINI−(1999)

双生児?GEMINI? 特別版 [DVD]

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■ストーリー
時は大正、東京で医院を経営する大徳寺雪雄(本木雅弘)はある日を境に家の中に違和感を感じるようになった。両親が変死し、いよいよ家に恐ろしいなにかが入り込んでいる気がして、不安は高まりつつあった。鍵となるのは雪雄の新妻りん(りょう)。彼女は大火事の中雪雄に拾われた記憶喪失の少女であった...。やがて魔の手は雪雄にも忍び寄ってくる...。

 異常に濃く巨匠の集った乱歩映画オールナイトのトリを飾るのは塚本晋也。しかし、乱歩映画一つでよく作家性の強い監督が集ったものですね。やっぱり乱歩って想像力を刺激する何かがあるんでしょうな。
 塚本晋也の代表作『鉄男』を観てないので、なんとも言えんのですが、デビッド・リンチの影響下にある人なのかな。映画のそこかしこで『消しゴム頭』みたいにゴゴゴゴ言ってるし、意味があるのかないのかわからないみたいな奇怪で不安な映像作りも『ツイン・ピークス』みたいでリンチを髣髴させます。
 前半は眉毛のないモッ君がやたらとインパクトあり、またモッ君以上に痩せて背の高い、もちろん眉毛のないりょうに恐れおののいたり、そしてりょう以上に筒井康隆が何もしてないのにインパクトあったりで、う〜ん、これは映像依存の映画なのかなと思ってました。本木雅弘とりょうの演技が演出上、人間味の欠片もなく不自然なんですよ。ストーリーはあまり進まず、よくわからないし。
 しかし、終わってみれば文芸風のなかなか面白いオチに。「人間味のなかった雪雄とりんは一連の騒動を通じて人間らしくなったのかなと。捨吉は雪雄とりんの業であり、雪雄は殺人を犯すことで、りんは捨吉を失ったことで業の苦しみを背負うことになったんですね。雪雄は貧民窟に目をそむけ、りんは恋人を見捨てた。しかし、その痕跡は捨吉の存在そのものに、そして足の傷に残っていたんですね。偽りの聖人に罪を自覚させ、人間に戻るまでの物語なのかなと」。まぁなんにせよ、いろいろ考えさせる面白いオチでした(そんなこというと元も子もないけど)。
 物語が面白くなるのは最後の最後なので、美術や演出がやっぱりメインなのかなと思うんですが、悲しいかな、前三作と見比べると、どうしても見劣りしてしまいます。特に怪しいメイクや衣装だと、石井輝男の『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』が思い出されて...。土方巽率いる暗黒舞踏団の衣装や舞踏の怪しさ、インパクトに平成の映像が太刀打ちできるとは正直思えません...。上手いものを先に食って損をした感じでしょうか。極度の清潔感や、原色の強い色使いなど、面白いとは思うので、ピンで見たら感想変わったでしょう。