盲獣(1969)
- 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 発売日: 2001/08/22
- メディア: DVD
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■ストーリー
モデル島アキ(緑魔子)はある日何者かに連れ去られる。監禁された場所には人体のパーツが山ほど飾られている奇怪な部屋。犯人は盲目の彫刻家道夫(船越英二)であり、アキは彼に魅入られてしまったのだ。道夫の母親(千石規子)が全面サポートしているため、アキの脱出は容易ではない。アキは道夫や母親を心理的に揺さぶることで脱出を図るが、事態は思わぬ方向に転じていく...。
乱歩映画オールナイト二本目。増村保造監督はちょっと知らなかったのでノーマークな映画でしたが、これは自分の中で大ヒット。怪しさもエロさも緊迫感も4本中ベストでした。役者の演技もストーリーも演出も素晴らしく、なんか出来のいい映画が出てきて面食らった感があります。乱歩読んでみようかな。
やはり特筆すべきは緑魔子の妖艶さ。前半こそ船越英二の迫力に押されがちだったのですが、後半における「触覚のエロス」表現はすさまじいものがあります。「気持ちのいい痛さ」が伝わってくるんですよ。設定がアブノーマルだけに誇張ぶりが逆に自然。緑魔子も船越英二も乱歩の世界観に浸っているんですね。人体のモニュメントだらけのセットでもだえる姿はひどく異様でなんかすごい映画見てるなぁと唖然としますよ。
狂気の盲獣を演じた船越英二の演技力も素晴らしい。道夫は主人公というかこの作品の世界観そのものなので乱歩と増村さんの演出に合わせていかなければならないんですが、ガッチリはまってます。心理的に不安定で少年のように純粋で頼りないけど、だからこそ恐ろしい。彫刻に向かう情熱が単純だけに、作られたモニュメントはいずれもインパクト絶大。激しい喜怒哀楽にほとばしる才気というもの*1が道夫にはあったんでしょうが、船越は微細な表情の変化と声音*2で見事に表現しています。
スケールの狭さはそのまま道夫の世界観の小ささ、閉塞感が反映されてるんですよね。だから悲劇的でもあり、道夫の抱えてる世界の恐ろしさがジワジワと伝わってくるんです。楽しみがなく、開放感もない。母親の存在によってのみ保障された偽りの安全というのはなんとも恐ろしい(母親の千石規子さんは出すぎず、引きすぎずの絶妙な存在感でした)。
物語の展開部分も見事。アレは物語を一気に刹那的にしましたね。ラストもお見事。
耽美で悲劇的。かなりオススメの傑作ホラーです。これはツボでした。
※船越英一郎は素晴らしい親父をもってますね。いつか片平なぎさと一緒にリメイク作ってください。片平なぎさは母親役で、アキを誘拐したら「お手柄♪お手柄♪」と喜ぶんです