江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969)

恐怖奇形人間

■ストーリー
この物語は灰色の部屋の中から始まる。
隔絶された灰色の部屋……大正13年秋……
記憶喪失で精神病院に収容されている人見広介(吉田輝雄)。彼の脳裏にかすかに浮かぶは奇怪な島の断片的な記憶。いくつか手がかりを得た人見は記憶を取り戻すため、病院を抜け出し単身裏日本に飛び込むことになる。そこで人見が見たものは悪魔的発想が生んだ奇怪で妖艶な人工島であった。

 『パノラマ島奇談』をベースにした石井輝男監督の乱歩もの。よく知らないけど、有名ですね、これ。途中までいろいろと印象に残る面白いシーンがありましたが、ラストで全部ぶっとんだ。なんだこりゃ。まったく予期していなかっただけに『シックスセンス』以来の衝撃ですぞ。
 『パノラマ島〜』をベースにしながらも割とオリジナリティのある脚本で、ミステリー調になっていて、観客を映画の中に引き込んでいきます。話の展開が早く、舞台もコロコロ変わるので、ついていくのが大変ですが、舞台が変わるたびに新たな謎が用意されており、筋は上手く流れていきます。
 ただ...。僕だけではないと思いますが、乱歩の小説って印象に残った場面は記憶されるんですが筋そのものを忘れてしまう傾向が強く...。原作も今年に読んだんですがオチは早くも忘れてしまってます。『孤島の鬼』でも感じましたが、乱歩小説は流れるような筋よりも、場面場面のインパクトが魅力だったような気がします。
 おそらく監督の石井輝男は乱歩のインパクト勝負が見世物小屋風の演出に結びついたのかもしれません。この映画はとにかく見世物くさい。
 冒頭から裸の女達がケラケラ笑いながら騒いでます。やたらと数がぶち込まれてて色気もクソもなく、ちょいと下品ですが昔だから仕方がないのかなぁと流します。
 そして、殺人に次ぐ殺人。ふと考えたんですがミステリーにおける殺人って、ほとんど手品ですよね。たいてい派手だし。
 そしてパノラマ島に移ってからはヒートアップします。なにやら前衛的なアートっぽい全身光ってる裸の女達の演舞の後には、遂にフリークスの一挙到来。みんな偽者ですが。最後にはなにやらモンドっぽいもの(死体、もとい蟹の生食い)まで見せられます。
 乱歩の小説って余り読んだことないんですが、この映画って妙に明るくてのどかなんですよね。無駄にコメディースキットが挟まっていたり、吉田輝雄のちょっと誇張気味の演技が笑いを誘います。ちょっとおどろおどろしいけど全体的にパスタくさい感じ。乱歩をイメージすると、なんか暗くてなまめかしく、締め付けるような緊張感と仰々しい文章が思い浮かびます。この次に見た『盲獣』がまさにイメージぴったりでした。この映画は乱歩を素材に石井輝男が自分風にアレンジした感が強いです。石井輝男の映画全然見たことないですけどね。
 この映画の魅力は土方巽のひたすら奇怪な存在感。後半の見所をすべて持っていってしまう強烈な個性を発揮します。二度繰り返される海辺の奇怪なダンスから、何かやらかしそうな狂気に満ちていて、見ていて楽しい。ちょっと昔の昭和の人って、時々ギラギラした目を持っていてとても魅惑的なんですが、土方さんはそれをもってますね。まさにこの映画の王様。長髪と誇大妄想な発言が妙に似合うハマリ役です。
 
 まぁ全ては超絶のラストに持っていかれるんですが。
 
あと、乱歩映画オールナイト、意外と女性が多くて驚きました。女性受けするんですね。
http://yaplog.jp/benijake148/archive/2282
↑へぇ、アイドルも来てたんだ。確かにオシャレな一群がいたけど、その中にいたのかな。この人しょこたんと仲いいんだっけ。しょこたん可愛い顔してサブカル歴、知識、熱意どれをとっても僕を遥かに凌駕しているんでしょ。ギザすげぇ。