バタリアン

バタリアン [DVD]

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■ストーリー
モダンゾンビの元祖『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は実際に起きた話であった。ウイルス兵器を開発していた軍の研究所で起きた事件であり、闇に葬り去られていた(!?)のだ。しかし、ゾンビは軍の管理ミスからケンタッキー州の死体倉庫に流れ着く。倉庫の管理人は面白がって取っておいたが、映画よりもゾンビはずっとやっかいな存在であった…。

 原題"The Return of the Living Dead"。ゾンビの父、ロメロの「ナイト〜」の「権利上」正式な続編となります。「ナイト〜」は権利上の続編『バタリアン』と、ロメロの続編『ゾンビ』、さらにタイトルだけパクッたイタリアはルチオ・フルチの続編"Zombie2"(邦題『サンゲリア』)と微妙な派生を遂げていきました*1が、これがいずれもマニアを唸らせる名作ぞろいなんです。どんなビデオ屋でもたいていこの三本は揃ってる。知らない人からすると紛らわしいことこの上ないんですが。
 
 感想ですが、やはり有名作品、他のゾンビと格が違いますわ。これは面白い。
 まず美術が素晴らしいですね。ゾンビだからといって腐らせるだけじゃなく、様々な工夫が凝らされてます。各ゾンビが非常に特徴的で、東宝東和が勝手に名前をつけているのも素晴らしい。ハーゲンタフ、タールマン、オバンバを筆頭に、ポリスゾンビ、ゾンビ犬、泥ゾンビとどれもこれもメイクに力が入っているのには感動。特にタールマンは誕生シーンも力が入っているし、中の役者さんの演技も骨らしい奇怪な動きと、巨神兵のようなグロテスクな貫禄がとっても魅力的で本作を代表するゾンビといえるでしょう。
 ドタバタコメディーだけに展開が非常にスピーディーだし、テンポもいいです。唐突なオープニングからハーゲンタフまではブラックなノリが冴え渡っており、「映画と違うよ!」のセリフではわかっていながら笑ってしまいました。ハーゲンタフ殺害のスプラッターシーンで笑いを引き起こすのは監督ダン・オバノンの悪魔のような才能が伺えます。このへんは『トータル・リコール』でも発揮されたかと。これは監督バーホーベンに原案オバノンと神がかったというか罰当たりなスタッフ陣ですが、期待通りの素晴らしい映画でした。機会があったらまた組んでください。
 
 ダン・オバノンはロメロへのリスペクトがあるようですが、『バタリアン』で開き直ったかのようにゾンビの庭で暴れまわったのが、いい方向に転じたようです。ゾンビが走ったり、理不尽に強すぎたり、エンディングが投げやりだったり、オバノンの思い切りの良さというか、悪ノリが伺えますが、コメディーとしての本作の雰囲気を作っている感じです。狙っていたならすごい(もちろん狙っていたんでしょうが(笑))。
 
 『ブレインデッド』と比べるとさすがにパワーは劣りますが、こちらは笑いだけじゃなく、ゾンビ独自の息苦しさと緊張感があります。個性的なゾンビデザインやハイテンポな演出は今でも十分楽しめます。いままでスルーしてたのを後悔。これは面白かった。

*1:さらに『ナイト〜』と『ゾンビ』の各リメイクが混乱を生む。