キャッスル・フリーク

キャッスルフリーク [DVD]

キャッスルフリーク [DVD]

スチュアート・ゴードン監督、ジェフリー・コムズ主演の『死霊のしたたり』コンビがおくる*1古城ゴシックホラーです。

■ストーリー
イタリアにひっそりとたたずむ古城。そこには孤独な老婦人が息子ジョルジョを虐待し、監禁していた。そのまま老婦人はジョルジョを監禁したまま死亡。古城にはジョルジョが残された。そしてアメリカの一家が老婦人の古城を相続しに現れた。牢の中では男が死にかけながらも脱出の機会をうかがっている…。


 おおお、救いのない映画ですなぁ。ジェフリー・コムズ演じるパパさんが家族のためにがんばりますが、やることなすこと悪いほうに向かっていきます。
 交通事故起こしたり、アル中になったり、大学首になったりと、パパさん結構ダメな人なんですが、ずっと苦しんでるし、家族を愛してるし、贖罪のためにがんばってますよ。それにしては奥さんの追及が厳しすぎだし、城の異変に警察は相手にしてくれないし、自棄酒煽りたくもなりますよ。そして酒は見事に身の破滅を招く…。
 閉じた環境でのホラーものというのは世間から隔離されているか、世間から相手にされないという演出をされてることが多いのですが、本作は後者。ひたすら主人公の家族が幽閉された男の恐怖におびえることになります。この手のものはモンスターが大暴れし始めるタイミングと大暴れする前の溜めがどれくらい面白いかが結構キーになりますが、演出上手のゴードンは陰惨で救いのない溜めを丁寧にネトネト描ききります。
 とにかく主人公とジョルジョの哀れなこと。二人とも人生に活路を見出そうとがんばりますが全て裏目に出てます。失敗すると不幸が倍返し。あまりにも不幸すぎて観客と距離が出来てしまうかと思いきや、二人とも救いのない人生を酒と女でごまかす人間くささが共感を呼びます。いやぁ、人生は寸善尺魔ですな。
 
 
 本作のショッキング・シーンもストーリーに合わせて陰惨に。スプラッター勝負ではなく、ジョルジョのかなわぬ渇望が表現された精神に来る重たいものになってます。手錠を外すシーンと、娼婦と主人公の娘を愛撫するシーンがこれに該当。特に手錠はずしはスプラッター度も高く、精神にもくるものがあるので本作のベストシーンでしょう。
 
 ゴードンは相変わらずカメラワークも演出も丁寧だし、ジェフリー・コムズの演技は感情を惹きつける上手さがあります。女優さんはバーバラ・クランプトンジェシカ・ダラハイドも美人。『死霊のしたたり』とあまりにスタッフが一致しているわりに、まったく性格の違うホラー映画になりましたが、これはこれで面白い。気分が沈んで疲れることが出来ますよ。僕は「したたり」のほうが好きですが…。
 
 
 以下雑感
 『フェノミナ』にて、ジェニファー・コネリーは後姿のシザーマンにこういいました。
「こわがらないからこっちを向いて」
言われたとおりにシザーマンがこっちを向いた途端、ギャーと悲鳴をあげ思いっきり怖がってたジェニファー。なんてひどい奴なんだ、だから『ダークウォーター』もコケたんだと思いましたが、今回も幽閉されたジョルジョ君を傷つける盲目の少女が現れます。
素敵な恋を夢想する少女。「容姿はどうでもいい!私の目が見えないのを気にしない優しい人と恋に落ちるの!」なんかジョルジョと少女の気持ちが通じ合うかのようなセリフですね。そんな少女にそっと手を伸ばすジョルジョ君。しかし、少女は驚いてギャー!と必要以上に大きな悲鳴を上げます。いや、少女の気持ちはわかるけど、セリフの前置きといい、ゴードンの悪意を感じますよ。
 この手の映画だと捨て駒のように殺される娼婦ですが、ゴードンはわざわざ娼婦に子供がいるというバックボーンを描写するし、同じく捨て駒要員で人格描写の少ない家政婦もわざわざ夫の存在を描いてくれます。確かにホラーって殺される人の描写が雑になりがちなんですが、わざわざ丁寧に描くとひたすら陰惨な印象が残ります。多分狙ってるんだろうけど。

*1:ちなみにヒロイン、脚本、原案、音楽も同じです