アクエリアス

アクエリアス [DVD]

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■ストーリー
前衛的なダンス舞台に挑むワンマンな演出家と、とにかく仕事がほしい貧乏役者達と、各人の意識の違いから現場はチグハグしていた。舞台はフクロウの面をした殺人鬼が誘惑されるというもの。公演まで差し迫っており、夜遅くまでリハーサルを行う日が続いた。ある日、舞台に遅れて上がってきたフクロウ。女性を殺害するシーンで登場にゆっくり時間をかけると、おもむろにナイフを振り上げた…。

 イタリアホラー界の帝王ダリオ・アルジェントの一番弟子、ミケーレ・ソアヴィ監督作品です。オープニングのミュージカルシーンはスタイリッシュで、なんかやらかしそうだという予感に満ちてましたが、だんだん原色とメタルが満ちてきて、アルジェント色に染まっていきます。
 ストーリーは特に工夫も癖もないスラッシャーもの。マスクを被ってるし、とろくさくて怪力、おまけにタフとスラッシャーモンスターの王道をいってます。チェーンソーの使用に、不気味な存在感とレザーフェイスブギーマンをオマージュしたと思われるシーンも時々見られます。演出も上手くもなければ下手でもない手堅いところ。
 
 ただ、クライマックスの「フクロウの舞台」は、「ソアヴィはこれだけ撮りたかったんじゃないのか」と思えるほど他のシーンを凌駕する荘厳さに満ちてます。死体を飾り、羽毛散る中に独りイスに座り黒猫を愛でる姿はフクロウの狂気と存在感を引き立たせます。悪魔のようとはこのこと。
 人間のような不気味なマネキンに、悪趣味な仮面が並べられた楽屋など、ソアヴィのセンスがそこかしこに伺えますが、作品自体は可もなく不可もない映画でした。売れない舞台役者のくたびれた感じにリアリティがあったり、主人公とフクロウの対決(特にバスタブのシーンは秀逸)がスリリングであったりと演出が下手ではないのですが、今ひとつ癖が強くない。こんなところに「アルジェントの弟子」にすぎなかった若きソアヴィの限界があったのかもしれません。代表作の『デモンズ3』と『デモンズ'95』に期待。