フリークス

フリークス [DVD]

フリークス [DVD]

 最近単館映画館でデジタル・リマスター版の上映が行われてますね。1932年公開のトッド・ブラウニング監督作。これもまた色々バージョン違いがあるようですが、僕が見たのはジュネス企画発売、サブタイトルなしのビデオ版です。

■ストーリー
 サーカス団で働く小人のハンスは花形女優クレオパトラに恋をする。初めはからかっていたクレオパトラだが、ハンスが莫大な遺産を手に入れようとしていることを知り、目の色が変わる。ハンスの財産目当てに結婚を狙うが、彼女はフリークス独自の倫理と絆の強さを甘く見ていた…。

酷評注意

 本物のフリークスが大勢出演している点で、またバックステージではお互いいがみ合っており、実はフリークスの絆は強くなかったという逸話*1も含めて興味深い一本です。
 ユーモアや人間らしさを見せて、フリークスに感情移入させようとしてるんでしょうが、役者経験のないためか、まったくセリフのないフリークスは不気味であるし、クレオパトラを監視するくだりにいたってはほとんどホラー映画のモンスターのような演出がされてます。
 フリークスと他の連中は同等に描かれてるかと思いきや、さもあらず。フリークスではない一座の連中はヘラクレスクレオパトラを除き、人格的にも立場的にも優位に立っているのは違和感あり。座長っぽいおばあさんはともかく、善玉の道化師フロゾのシュルツ(ピンヘッド)に対する子ども扱いはどうなんだろう。かろうじてシャム双生児ヒルトン姉妹*2が強気で対等以上に渡り合ってるし、ホラー風の演出がされてません。
 結果、トッド・ブラウニングのフリークスに対する好奇心と愛情がごっちゃになった感じで、鑑賞後はなんとなくスッキリしません。フリークスは純真な天使であり、共感できる人間であり、そしてモンスターでもある*3。この焦点の不安定さはフリークスではないのに、フリークスを理解しようとしたトッド・ブラウニングの限界を示しているようです*4
 主人公のハンスがクレオパトラの本性を知って一言、「あのフリークスめ!」…多分、クレオパトラの悪い性格を非難しての一言でしょうが、自身の奇異な体が悪であることを意味してしまうトンデモ発言です。完成度も、メッセージ性も未熟ですが、やたらとインパクトがある。この映画の性格を示した一言じゃないでしょうか。

*1:デジタルリマスター版公式HP参照

*2:喜劇のスキット担当ですが、肝心なとこに触れてないのがあからさま。ブラックで破綻の予感に満ちてます

*3:例示すれば「森で遊んだり、帽子を貰ってはにかむ様子は天使のようであり、痴話げんかしたり、悪い女に騙された馬鹿男を笑う様子は人間味があり、フリークスを罵倒されるや真っ黒になってひたひたとヘラクレスに襲い掛かり、謎の技法でフリークスにしてしまうモンスターになります」。

*4:天使と悪魔が共存してるのが人間って話もありますが、それにしたって距離感メチャクチャ。無言の登場人物があまりにも多く、描写不足