カリートの道

■ストーリー
5年ぶりに刑務所を出所したプエルトリコの大物マフィア、カリート・ブリガンテ(アル・パチーノ)。老いて力の衰えを感じる上に、恋人と長い間引き離されたことに懲りた彼は、キッパリ足を洗うことを決心する。しばらくニューヨークで仲間のつてでナイトクラブを経営した後は、プエルトリコでのんびりレンタカー屋を経営するつもりであったが、現実は徐々に彼を昔の世界へ引きづり降ろしていく…。

 ずるずるずるずる過去に引きずりこまれていく悲劇。カリートは新しい自分に生まれ変わろうともがきますが、現実は彼を掴んで離さない。戻ろうとしても、街は時代が変わり、人も変わっている。環境の変化とカリート自身の老いが口をあけて彼を飲み込もうとしているんです。
 アクションは抑え目でひたすら渋くて、静かな映画です。台詞回しもぐっと来るものがあるでしょう。パチーノ好きなら楽しめるはず。パチーノの髭面は貫禄があってカッコいいです。今回もパチーノの目の演技は鋭い。
 
 カリートの親友役クレインフェルド弁護士にショーン・ペン。今回は小市民弁護士ですが、上手い。この人やっぱり器用です。『ギター弾きの恋』では自己中の孤独な男を、『I am Sam アイ・アム・サム』では知的障害の男を演じましたが、映画のたびに説得力のあるというか、引き込ませる演技をします。さすがマドンナが見込んだだけのことはある。ショーン・ペンが脇で光ってくれるおかげで、パチーノ鑑賞映画にならずに済んでいます。
 ニューヨークに台頭する新しいプエルトリコ系マフィアにジョン・レグイザモ。やっぱりこの人はチンピラがよく似合う。コロンビア人なので、パチーノよりもプエルトリコマフィアっぽいです。というか、周りのプエルトリコ人のなまりとアクが強すぎて、パチーノが全然プエルトリコ人に見えない…。
 蛇足ですがジョン・レグイザモ、同じ年にルイージやってデニス・ホッパーと戦ってたんですねー(12年後に『ランド・オブ・ザ・デッド』にて再戦)。「ルイージに髭がない!」と世界の任天堂キッズに物議をかもしましたが、こっちではなぜか髭が生えてます。
 
 今回の長回しの見所は「サッソのナイトクラブに入った最初のシーン」。カリート視点でナイトクラブでスムーズに動くエキストラ達を一望した後は階段を登り、ドアを開けサッソの歓迎を受けます。心なしかサッソの緊張が見て取れる。他にもパーティーの場面が割と多く、そのたびに長回しが使用されてます。