銀河ヒッチハイク・ガイド

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

■ストーリー
地球が銀河バイパス工事のため、一瞬で消滅!たまたま友達が宇宙人だった冴えないイギリス人、アーサー・デントは運良く生き延びることが出来た。しかし、故郷を失ったため、今は宇宙をさまようヒッチハイカー。でも大丈夫。アーサーには宇宙のあらゆる知識が詰まった『銀河ヒッチハイク・ガイド』がある。カバーの言葉を心に留めておけば、どんな危機も乗り越えられるはずだ。…曰く「パニクるな!」

 僕が高校生だった頃、深夜のNHKでは海外のコメディーを放送する枠がありました。そこで『Mr.ビーン』やら『空飛ぶモンティ・パイソン』やらを楽しんだものですが、中でもお気に入りで印象に残っていたのが『宇宙船レッド・ドワーフ号』。第一週目でいきなり主人公以外全員を皆殺しにしてしまう強烈な掴みから、ブラックでシュールな笑い、人を食ったかのような奇想天外な展開とその魅力は僕を掴んで話さなかったわけですよ。
 明らかに人を選ぶイギリスコメディー。最初はなかなかとっつきにくかったし、慣れてからも、明らかにつまらない話がはいったりしてます(これはコメディーの連続ドラマである上、仕方のないことなんでしょう)。しかし、嫌味でヘタレなホログラム、リマーのキャラクターが立ってきてからは、もう釘付け。…今考えると偉そうな奴が馬鹿にされるのはわかりやすくてコテコテですが、まぁ、他にもシュールな設定やらギャグやらがツボだったわけですよ。
 
 さて、そんな『宇宙船レッド・ドワーフ号』好きの僕ですが、今年『宇宙船レッド・ドワーフ号』に強い影響を与えたSFがやってくると聞いて喜びました。その作品の名は『銀河ヒッチハイク・ガイド』。なにやら一瞬で地球が崩壊し、宇宙船で愉快な仲間達が珍道中を繰り広げるらしい…。
 「レッド・ドワーフ」っぽいというか、設定の格子はまんま「レッド・ドワーフ」。むしろ作品が出来た年代を考えるに「レッド・ドワーフ」が『銀河ヒッチハイク・ガイド』をパクッたっぽい。しかし読後感では、同じなのはあくまで格子だけで登場人物の性格もストーリーも全然違うので、設定の酷似はむしろ「銀河〜」へのオマージュと見て取れるでしょう。こんなところでパニクってはいけない。
 映画の上映は今か今かと待ち望んでいたのですが、いつの間にか公開されてました。もちろん全国上映でないのは覚悟してましたが、単館でも六本木ヒルズのみという随分となめた上映形態をとってくれたおかげで観ることができませんでしたよ*1
 え、『銀河ヒッチハイク・ガイド』って、そんなにオサレな映画なの?ヒルズに恐れをなした僕は、とりあえず映画をビデオスルーにして書籍から入り込むことにしました(それにしてもAmazon届くの遅いよ!)。
 
 一節丸々皮肉とユーモアをこめて設定を説明したかと思えば、ご都合主義という言葉をせせら笑うかのような豪快なストーリー展開をみせたりと、早いのか遅いのかわからないテンポでしたが、「よし、これから登場人物の掘下げといろんな旅が始まるんだな!」ってところで物語が終わってしまったので、やっぱり遅いほうなんでしょう。今回読んだのは一冊だけでしたが、どうやらシリーズは全部で5冊あるようで。四作目以降は和訳はありませんが、映画化により新訳と再刊行が進んでいるらしく、5作全て、いずれ和訳版が刊行されるでしょう。
 奇想天外な展開はただの掴みで、ネタは独特の抜けたような文章。だから説明はとても難しいのですが、設定をひねってひねってひねり回した挙句、バカバカしくて意味のない出来事が綴られます。本作の後半の主題は「宇宙の真理とは?」ですが、この壮大すぎてくだらない問いのためにあきれるほどの文章と設定を駆使します。このシュールさにパニクることがない人ならどうぞ。
 各登場人物の掘り込みと掛け合いの発展を期待して、次も買うぞ。鬱ロボット、マーヴィンはちょっとツボなので注目。

*1:我々がウガーウガー言いながらうかつに近づくと花火打ち上げながら電流攻撃されます