サイン

サイン コレクターズ・エディション [DVD]

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■ストーリー
 妻の死をきっかけに、神が信じられなくなった元牧師のグラハム・ヘス(メル・ギブソン)。今は街から離れたとうもろこし畑でひっそりと暮らしていた。隣にはグラハムを心配して近くに住んでいてくれる元野球選手のメリル・ヘス(ホアキン・フェニックス)もいる。息子のモーガンに娘のボーと静かで平穏な日々を送っていたが、ある日、とうもろこし畑に突如ミステリーサークルが。これをきっかけにグラハムの周りでは次々と奇怪な出来事が起きてくる。果たしてこれは単なる偶然か、それともなんらかの「サイン」なのか…。

 出演者も少ないし、スケールも極小、低予算でストーリー勝負のシャマランらしい映画だなぁと思ってたら、脚本料で1000万ドル以上使ってるのかよ(脚本家はシャマラン…)。ハリウッドは三作目でギャラが跳ね上がるとはいいますが、ひどい話だ。別に役者陣に大物をそろえる必要はないですし、本作のテイストも結構B級です。少なくとも、『シックス・センス』並みの脚本とどんでん返しを期待すると激怒するかも。
 『シックス・センス』『アンブレイカブル』と続き、本作も主なテーマは家族の絆であり、静かな世界観と丁寧な描写、そして驚きの結末が用意されています。
 今回の謎は「宇宙人の正体」と「グラハムの妻の謎の言葉」です。グラハムの周囲では二つの謎に関わるサインがそこかしこに現れますが、いつもとは違う意味で驚きの結末を迎えます。が、あまりにも出来すぎていて、しらじらしくもあり。「全ての出来事は神からの意思のこもったサインであり、正しい解釈により道は開ける。しかし、思ってもよらないことをただの偶然だと思ってしまう人間は不安の中、闇の中をさまようことになる。だから信じるものは救われるというオチですが、弟にバットを振り回させろなんて、紛らわしいアドバイスにも程がありますよ。
 あと、この映画では「サイン」だけに各登場人物のセリフが重要な鍵になったりします(シャマラン映画はだいたいそうですが)。「宇宙人に襲われた息子を助けるシーンは凄いですね。自らの口から「助かる」というサインしか出してないので、息子は助かったという場面ですが、これは言霊信仰*1ってやつでしょ。キリスト教にも言霊信仰って通じるんでしょうか。その前のグラハムが息子の喘息を鎮めているシーンは、彼自身の言葉が力を得ていくことを示す象徴的な場面になりましたね。
 相変わらず飽きさせない筋運びで、笑いもサスペンスもあったんですが、さすがにオチが苦しすぎるので楽しめない人は多いでしょう。
 今回は楽しみを別に見出すべき。家族描写の足りなかった某パニック映画の裏返しで、本作は爆発や追いかけっこが全くないので、某トム映画の人間ドラマに不満だった人は本作を見ればいいんじゃないでしょうか。家族が絆を取り戻すような繊細な人間ドラマはさすがにシャマラン、上手いです。子供が父親を信頼してないのも露骨にではなく、徐々に、徐々に描いていきます。グラハムが心強くなってくるところもストーリーの緊張感とあわせて描かれており、映画のリズムがスムーズに流れているのがわかります。
 また、映像のセンスもあるシャマラン、暗い地下室のシーンもスリル満点で楽しめます。懐中電灯をちらちら動かすだけで、何か起こるかもしれない予感と不安をかき立てるのはさすが。レイ邸のドアの下をのぞき見るシーンも最高。怖がらせる常套手段ですが、普通に映画の撮りかたの上手いシャマランがとる普通のシーンは普通より怖いんです。
 オチがよくないだけにオチ以外に目が向きますが、そうなると、シャマランは普通に映画作りの上手い人だってのがよくわかります。いっそのこと職人監督に転身したほうが面白いものを作ってくれそうなんですが、まぁこの人は『シックス・センス』のオチを一生引きずることになるんでしょうナァ...。
 
 
 最大の謎はシャマランの腹部の傷。「エイリアンは毒ガスで攻撃する」はずなんですが、どうして腹部を刺されたのか…。

*1:言葉は魂が宿ってて、実現させる力を持つというもの。「太政大臣になるならこの弓当たれ」ってやつ