エリック・ザ・バイキング

エリック・ザ・バイキング バルハラへの航海 [DVD]
イギリスのインテリコメディー集団、モンティ・パイソンのメンバーの一人、テリー・ジョーンズの製作した北欧神話ネタのアクションファンタジーコメディーです。北欧神話ネタがわかんなくても多分大丈夫です*1
■ストーリー
神々が争いを終え、ヴァルハラで永い眠りについた"神々の黄昏"ラグナロクの世界。太陽はフェンリルに飲み込まれ、闇の中、人間の間では争いが絶えなかった。ノルウェーのバイキングの一人、エリック(ティム・ロビンス)は村を略奪してても女を襲えず、喧嘩を見れば仲裁してしまう心優しい青年。ラグナロクを終焉させるために、誤って殺してしまった村娘を救うためにエリックはバイキングの一団を率いて航海にでることになった。
 
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 『人生狂想曲』で衝撃を受けて以来、何かと心の隅に引っかかっているモンティ・パイソンですが、今回もついつい鑑賞してしまいました。
 モンティ・パイソンの主要メンバーのうち、出演しているのは、テリー・ジョーンズジョン・クリースの二人のみ。ジョーンズが子供のためにとったわりと私的な映画なのでパイソン風味を期待しすぎていると肩透かしを食らうかもです。ネタの泉が二人なので、パワーに欠けるところはあるかもしれません。パイソン独自の毒々しさ、皮肉、そしてバカバカしさと知性のごった煮感は健在ですが、ちょっと薄味でタルイです。『人生狂想曲』で感じた強烈さはこの映画にはありません。ジョーンズはこの映画で失敗してしまい、映画の表舞台から姿を消してしまいました…。
 船を吹っ飛ばしたり*2、怪獣と戦ったり、バイキング同士の海戦と迫力ある映像作りに力が偏ってる感があり、ギャグが少ないしパンチが足りないのは物足りない限り。コメディーというよりも、ちょっとおかしな冒険活劇といったほうが適当でしょう。
 出番の少なかったモンティ・パイソンの二人組、テリー・ジョーンズ(ハイブラジルの王様)とジョン・クリース(ハーフダン・ザ・ブラック)は存在だけでワクワクさせたのは流石でした。どちらもノー天気な王様に、適当で無慈悲な領主を演じてるだけで、大して面白いギャグをやってるわけじゃないんですが、ニヤニヤしてしまう。二人の演技の誇張度合いはパイソンのギャグに丁度いいんですよね。ティム・ロビンスは普通に演技してるんですが、パイソンのはじけ具合にミスマッチの感はあります。主人公が過剰演技で映画全体を引っ掻き回すだけで印象はずいぶん変わったと思いますよ。船に乗るまでのエリックが頼りないことを示す一連のスキットもセリフがちょっと笑える程度で演技のパンチが足りなかったのが苦しかったと思います。
 関根勤(スレイブマスター)も出番が少なかったにもかかわらず気を吐いてましたね。はい、関根さん出てるんです。伊達にパイソンマニアじゃありません。ビデオのパッケージではこの映画は凄い凄い連呼してますが、パイソン好きだからといってイギリスに単身乗り込んでしまう関根さんのほうがよっぽど凄い。奴隷達にがなりたてるだけなんですが、関根さんの勢いだけで笑えてしまいます。「コノヤロウというのは...コノヤロウなんだよぉ!」などと、言ってることはメチャクチャなんだけど面白い。しばしば英語字幕が出ないのでアドリブ炸裂させてるんでしょう。勢いでイギリスまで来ちゃった感がにじみ出てて、もうノリノリ。連日航海してるはずなのに、一時間ともたないような鞭の連打に元気いっぱいの罵倒の連続、不要な説明台詞のオマケつきで、もうオナカいっぱいです。そう、関根さん並みの過剰でエネルギッシュな演技がパイソンのコメディには求められているんですよ!
 
…お気に入りはキリスト教の神父さん(本作ではつまり異教徒)のスキット。あと関根さん全部。

*1:一応補足:ヴァルハラ=戦死者はここに集う。北欧神話最高神オーディンの殿堂でもある/虹の橋(ビフロスト)=人間の世界と神の世界をつなぐ橋)/ロキ=神の敵にも味方にもなるトリックスター、最終戦争の引き金/フレイヤ=愛の女神、Fridayの語源。あとは補足不要と判断、もしくは詳しくないので気づかなかった

*2:ちなみに本作と同年度公開のギリアム監督作『バロン』も船やら爺さんやらをいろいろ空に吹っ飛ばした挙句、本作同様興行成績はズンドコに落ち込んでしまいました。哀れ。