ムーラン・ルージュ

ムーラン・ルージュ [DVD]
■ストーリー
時は1899年ボヘミアの嵐吹き荒れるパリのど真ん中。愛と真実を叫びたくて飛び込んできた小説家志願の田舎の若者が一人。彼の名はクリスチャン(ユアン・マクレガー)。チャンスを狙ってアパートの同居人トゥルーズ(ジョン・レグイザモ)の手がける演劇の脚本を手がけることになった。演劇の舞台は絢爛豪華なナイトクラブ"ムーラン・ルージュ"。支配人のジドラー(ジム・ブロードベント)は新たに演劇に進出しようとしていたのだ。早速ジドラーに売り込みをかけようとムーラン・ルージュに乗り込むクリスチャン。そこでクリスチャンが出会ったのはムーラン・ルージュの美貌の歌姫にしてジドラーの一人娘サティーン(ニコール・キッドマン)であった。恋に落ちる二人。しかし二人の愛に忍び寄る影があった…。
 
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 今回上映されたなかで一番ミュージカルの楽しかったのがこれ。DVDもサントラ二枚も持ってて嫌いなわけがない。愛と真実を映画のど真ん中で叫ぶこってりしたミュージカルです。原色ギラギラで食傷起こしかねない美術もよし。今世紀入ってからでは僕の最も好きな映画です。
 ミュージカルというと、普通は演劇なんですが、映画でも本数自体さほど多くないんですが、人気のあるジャンルなんですね。でもせっかく映画でやるわけですから、映画でやる意味を問いたくなるわけです。例えば『42番街』のようにアングル切り替えまくりの集団ダンスとか、演劇では表現不可能ですよね。元々が演劇の映画だと、いかにも演劇の舞台のセットを映画風にアレンジしたみたいな狭苦しさを時折感じるんです。しかし、本作は映画の本領を見せてくれた気がしますよ。というか、主人公の歌と街の明かりが呼応するという馬鹿をやるのはバス・ラーマンくらいでしょう。全ては主人公とヒロインが恋に落ちるまでの怒涛の高速展開に詰まってます*1。フラッシュバックに早回し、細かいカット割りにCGと映画でしか出来ない演出を盛り込みまくった結果、鬼のように早い展開になりますが、いまどきないようなこってりラブストーリーに強引に巻き込んでいくのに効果的な演出となりました。クリスチャンとサティーンが愛を語り始める頃には観客は夢見心地です。デジタル音楽多用に、MTV的な演出(MTVのパロディも)、極めつけは流れるナンバーのほとんどが既存のポップスのアレンジという滅茶苦茶をやってのけるのも映画ならでは。この演出は演劇でもできるんですが、演劇よりもMTVが意識されてる感があるので映像のほうが雰囲気がでるでしょう。
 象の部屋のスキット*2や、ムーラン・ルージュのダンスなど、展開の早い演出が抜群に上手いバス・ラーマンですが、中盤のゆったりとした展開における絵の作り方もセンスがあります。公爵の元に向かうキッドマン、公爵の部屋の下を通る主人公の光の当て方の綺麗なこと。赤は派手ながら悲劇を暗示していてミュージカルにピッタリですね。赤いカーテン三部作の末尾を飾るにふさわしい演出です。でも公爵関連の場面は青いんですね。最近青い光で場面を彩るのが流行っているようですが、公爵の場面はもっと濃くて暗いです。
 この映画最高のシーンはやはり、主人公がムーラン・ルージュに初めて入り込んだときのスペクタクルですね。ニルヴァーナのテーマで度肝を抜かせながらカラフルなスカートと光速のダンスで夢見心地にさせる見事な場面でした。
 ポップスの有名ナンバーをぶち込みまくり、パリなのにインドダンスや日本の提灯に花火まで出てくるごった煮映画で完成度を保ってしまうのがバズ・ラーマンの恐るべきところ。こういうのが本当におもちゃ箱をひっくり返した映画っていうんでしょう。
 
…キッドマンは何でも出来るね。過剰演技な役どころだったけど楽しそうでした。
…レグイザモは今回初めて存在に気づきました。注目してみたら意外と登場してましたね。

*1:クライマックスはアクションが邪魔です。

*2:象の部屋が本当に象の形をしていたときはあまりにバカバカしくて感激しました