シカゴ

シカゴ スペシャルエディション [DVD]
■ストーリー
裁判も人生も劇場だ!人を魅了したものが勝つ。ショーの主役は金と色気と三枚舌、仁義に演技ともてるものを全力で出し尽くすのだ。スターを夢見るロキシー(レニー・ゼルヴィガー)は騙された怒りで不倫相手を銃殺。刑務所に送られるが、絞首刑は嫌だ。でも大丈夫。イリノイ州には女性弁護負けなしの凄腕弁護士ビリー(リチャード・ギア)がいるのだ。裁判とメディアを利用して逆転スター街道を狙う痛快ミュージカル。
 
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 今回上映された三本の中では一番完成度の高い一本。ストーリーも楽しいし、役者もみんな役にバッチリはまってます。歌もダンスも一昔前の都会ならではの工夫がなされていてグッドですね。
 ミュージカルって劇中劇というかバックステージものがやたらと多いんだけど、なんででしょ。クライマックスをステージのクライマックスと合わせることで人数多くてスケールでかいスペクタクルを展開できるからでしょうか。本作もバックステージものといえばバックステージですが、刑務所やイリノイ州のマスコミまで引き下がってしまうのは見事。汚いショービジネスと都会のインモラルをコミカルに描ききったのは見事。どうしても単純で大味なストーリーになりがちなミュージカルにしてはオリジナリティ溢れる脚本ですよ*1
 配役は奇跡ですね。主要登場人物はみんなまさにピッタリ役にはまってます。
 主人公ロキシー・ハートは『ベティ・サイズモア』やブリジット・ジョーンズシリーズに出演。オスカーもとって、最近では"オスカー狙い丸出し"『シンデレラマン』に出演でメキメキ株を上げているレニー・ゼルヴィガー。昔の髪型がウソみたいに似合うし、頭の足りなそうな表情、男の好きそうな唇とどこを見てもロキシー・ハートにはまりまくってます。好みじゃないし、もともと評価の高いことに不満持ってましたがこの作品で見方が変わりましたね。見れば見るほど味の出る役者です。ゼルヴィガー侮りがたし*2
 "ジジイでも二枚目"リチャード・ギアも食えない役者弁護士にピッタリ。「全ては愛のため」って歌うナンバーから反則。きょうび女に囲まれることが様になるじいさんなんてリック・フレアーを除いて彼くらいのものでしょう。したたかで、演技も最高でまわりを魅了するなんて、やっぱり"青い目をしたアルカイックスマイル"リチャード・ギアじゃないと悪役になっちゃいますよ。もちろんリック・フレアーを除いて、Wooooooo!
 そして本作で鬼のように踊り狂ったヴァルマ・ケリーことキャサリン・ゼタ・ジョーンズは、ゼルヴィガーとリチャード・ギアがあまり歌いも踊りもしない中、ミュージカルの楽しさを貫禄とプロ根性でキープしてくれた大黒柱でした。オープニングの"All That Jazz"で観客を映画に引き込むのも彼女ならば、中盤でゼルヴィガーを妹の役にスカウトする場面で「そうだ、これはミュージカルなんだよ」と再確認させてくれるダンスを魅せてくれるのも彼女です。ホントに一人でいろんな種類のダンスを魅せてくれたのは素晴らしい。特にオープニングのカッコよさはありえないですね。もともと"All That Jazz"はカウンターカルチャー気味の挑発的なナンバー*3ですが、忙しい立ち振る舞いから登場するときのポーズ、それからの歌と踊りまでゼタの気迫が溢れています。ヴァルマ・ケリーは物語の中でそんなに目立った位置にはいなかったんですが、オスカー選考委員は見るとこ見てますね。リチャード・ギアはノミネートすらされていませんでしたが(涙)。
 その他にも所長ママ・モートンを演じたクイーン・ラティファに"ミスターセロフィン"ジョン・C・ライリーと配役がぴったり。こだわったんでしょう。容姿から演技まで役にはまった役者を選べるハリウッドの層の厚さを感じるし、配役にこだわりまくったスタッフのセンスは評価できます。
 筋は本当に僕好み。人間のエゴとかしたたかさとか欲望とか汚いところを大声で叫ぶところがもう、気持ちよくて仕方ない。ダーティーなところに人間らしさを感じる僕にとって、世間と人間の性をえぐったようなブラック・ユーモアというのはカタルシスを感じるわけですよ。モラルでワックスをかけた表面的な世間なんてクソッたれみたいな。重たくなくて笑えるのが健康にいいですね。
 ストーリーがすごくまとまってて、終わりが一番気持ちいいのがこれ。オススメですよ。

*1:本当に偉大なオリジナルは既にブロードウェイで成功したミュージカル舞台ですが

*2:悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス』はもはや黒歴史ですか。そうですか

*3:映画『オール・ザット・ジャズ』参照。昔に見たけど、挑発的だったのは覚えてますよ。監督は『シカゴ』原作のボブ・フォッシー