ドッグヴィル

ドッグヴィル プレミアム・エディション [DVD]
■ストーリー
人口20人強の世間と隔絶したアメリカの片田舎、ドッグヴィル(犬の村)。そこに住む若き自称小説家のトムは村のみんなを啓蒙しようと熱心であった。村の人々は寛容ではなく、何かを受け入れることが苦手。しかし村のみんなにわかってもらうには実例が足りなかった。村の人々が自分を知るための実例が…。そんなある日、一発の銃声と共に一人の美しい女性グレース(ニコール・キッドマン)がドッグヴィルに逃げ込んでくる。
 
 まず、本作がちょっと特殊であることを説明しておきましょう。この映画は白線で家や道路を表示しているだけでほとんどセットらしいセットはありません。華やかさを極限にまで抑えた演出が映画に格調高さを与えてるんでしょうね。おも〜いストーリーに合ってます。あと、上映時間がほぼ三時間とちょっと半端じゃない長さになってます。重くて疲れる話だけど魅せる演技と展開なので何とかなると思います。
 監督はラース・フォン・トリアー。はぁ。全然知らないけど、なんでわざわざつぶやいたかというと『ダンサー・イン・ザ・ダーク』撮った人なのね。道理で暗くて重いわけよ。いや『ダンサー〜』観たことないけどさ。
 田舎というのは醜い人間や共同体を描くのに最適ですよね。映画でもいわれてるんですが、田舎であろうと都会であろうと、どこも人間というのはかわらないものだし、根っこはみんな醜いものなんです。上手に隠したり制限できればいいんですが、いったん堰を切ったように開放されるとパニックに陥る。人間は極限状況に陥れば何だってできると思いますよ。これが田舎になると、共同体は狭くなり個々の人間関係も描き易い。もちろん関係も濃くてドラマが生じやすいんですね。
 確かに演出は落ち着いた感じで展開は章で区切られており、高尚な印象与えますが、とことんまで人間を醜く描く姿勢は買えます。これがパニック映画やゾンビだと殺しあい始めるからね。主人公が賢くて慈悲深く我慢強い女性であるために村人の排他的な行動がエスカレートしてもずーっと受身なんですね。めちゃくちゃストレスフルで地団太踏みたくなりますが、慈悲に満ちたキッドマンの顔から徐々に表情が消えていく様は本当に見ていて疲れていきます。村は変化に対応できず崩壊していくのね。リアリティありますね。これが身近な問題だとサークルクラッシャーとかになるんでしょうね。怖い怖い。
 個々の村人が醜いだけじゃなくて描写がしっかりしてるのもいいですね。このへんはさすが三時間。単に嫌悪感を抱かせるだけじゃなくて、排他的な行動一つ一つがわかるんです。共感できてしまうんです。これも怖いところですね。行動の原因を人間誰しも持ちうる普遍的な感情に落とし込んでくるんです。みんな誰しもがドッグヴィルの住民なんだとキッドマンの乾いたまなざしが語りかけてくるわけですよ。
 汚い人間や横溝的な暗い村がみたいならオススメ。面白かったですよ。
 
 最後に、ニコール・キッドマンは美しかった!都会の綺麗なおねえさんを強調する演出上、カメラもメイクも気を使ったと思いますが、キッドマン自身も野心的な映画に気合が入っていたんでしょう。物語進めば進むほどどんどん綺麗になっていくように見えます。綺麗で、仕事ができて、根性入った強そうな女性っていいね。僕もがんばろぉと身が引き締まります。