ゾンビ/ダリオ・アルジェント監修版
![ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE [DVD]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51A0PE2MPPL._SL160_.jpg "ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE [DVD]")
■ストーリー
ゾンビ映画の代表作はテレビ局の混乱から始まる。どうやらゾンビ・パニックは規模が拡大し、世界を混乱に導いているらしい。テレビ局のスタッフ、スティーブは恋人のフランシーンを連れて危険な街からヘリで脱出を図る。SWATの友人、ロジャーとピーターも一緒だから心強い。遠方に避難しようとするも、途中で立ち寄るガス・ステーションはどこも空っぽ。仕方がなく四人は近くのショッピング・モールに立てこもることになるが、ゾンビたちは生前の習慣から生活の中心であるモールに集まってくるのであった...。
『ゾンビ』を劇場で観れるなんて！ホラーマニア失禁ものの感動を味わうことができたわけです。オールナイト万歳！
もともとアルジェント版*1はゴブリン*2サウンドが大爆発でアメリカ公開ロメロ版よりも大分うるさいんで劇場向きですね。ストーリー進行もアルジェント版のほうが丁寧で分かり易いんですが、僕は徹底してローテンポなロメロ版のほうが好きです。そんなに徹底して見比べたわけではありませんが…。
レビューもクソもなく『ゾンビ』はマイフェイバリット・ムービーなんで信仰じみた言葉しかでてこないわけですが、あいかわらず秘密基地作りに似た楽しさをモールの立てこもりに感じるし、主要登場人物は実はシリーズ１少ないだけに一人一人描写が丁寧でカッコいいです。責任感があり、利口で状況をよく把握しているリーダーのピーターはやはりカッコいい。有能すぎて親しみのもてない前半から変化して、後半は事態が悪くなっていくにつれ苦悩を見せ始めいく描写は心をつかみます。SWAT隊ながら少々はしゃぎすぎのロジャー、役立たずのヘリ坊やことスティーブ、妊婦でありシリーズ中最弱のヒロインになってしまったフランシーもそれぞれ存在感を示します。
バイクギャング役のトム・サヴィーニ*3登場シーンは思わず拍手してしまったし、愛用のマチェット振り回してゾンビをなぎ倒す御大はカッコいいし、何より楽しそう。
前半の楽しさからうって変わって後半の重々しい雰囲気は死の恐怖と危機感を煽ってきますね。死んじゃう彼らのシーンはちゃんと時間をかけてて悲しさを伝えてきます。例えば「スティーブ」・ゾンビは一番好きなゾンビですね。死んでからとる行動が悲しすぎる。詳しく語りませんが、生前の愛着がかえって危機を生むという演出は「最後まで役に立たないスティーブ君」が救われなくてかわいそうですよね。こうした救いのない描写が楽しい前半との落差になるのです。助からないような非常事態にあるんだという事実がゆっくり心に押しかかってくるわけですよ。
…多分この先何度も観る映画だから、毎回新たに気づいた点だけ述べていきますよ。
今回新たな発見はフランシー嬢のカッコよさですね。妊婦であるため基本的に男達の戦闘には参加しません。しかし、自発的に射撃やヘリの操縦を覚えようとするなど、生存能力の高さは『ナイト』のヒロインをはるかに上回ります。
ちょっと脱線するけど『えじき』と『ランド』のヒロインは強いですねー。見た目もだんだん迫力を増していて、『ランド』のアーシア様*4とか完全にパンクですよね。途中からコート着ちゃって見せ場も減ったのは残念でした。ヒロインの変遷も面白いけど、黒人ヒーローの変遷は『ランド』の追加によりすごく面白いことになっているから、未見の人は是非チェックしてみてください。
基本的に物置に隠れてますが、モールを開放した後は時々メイクやファッションを楽しんだりします。
しかし、フランシーの素晴らしさは一貫したクールな視線です。リーダーのピーターも基本的に無表情で冷静に状況を把握していますが、フランシーはパニックに飲み込まれてしまっている恋人のスティーブとの対比が明確で冷たさと冷静さが引き立ってくるのです。さらにピーターはみんなを率いて生き抜いてやろうという意思が表情から伺えるのに対して、フランシーの視線は何も語ってなくて恐ろしい。トラックでモールの入り口をふさぐシーンで、フランシーはゾンビへの怒りを口にしますが、表情も口調も極めて冷静。状況に静かに適応していきながらも現状には怒り心頭なわけです。品があって強いヒロインというのはいいですね。深夜にスティーブと一緒に就寝しているシーンでも、1人だけ起きていて考え事をしているフランシーンは物憂げで絵になりますねー。
