屋根の上のバイオリン弾き

屋根の上のバイオリン弾き [DVD]
 こんなに長い映画だったとは...こんなにミュージカルな明るい映画だったとは...そして、後半ここまで暗い映画だったとは...。映画見る前も見た後も色々と予想を裏切られるシーンが続きました。事前情報ほとんどナシってのはいいね。その分面白くない映画を引いちゃったり、楽しめない映画の見方をしちゃったりするリスクもあるわけだけど。
 ミュージカル映画という評判は聞いていたんだけどDVDのジャケでヒゲ面の暑苦しいオヤジがドーンとドアップでのっかってたんで抵抗感あったんですよ(わはは、はまぞうのジャケではオヤジ消えてるなぁ)。そんなに辛気臭い表情してないんだけど、夕方の背景とも相まってとても歌って踊る陽気なミュージカルが連想できない。ミュージカル映画大好きな僕でもなかなか手が伸びなかったわけですよ。
 しかし、蓋を開けてみれば、ストーリーの途中で突然大勢で歌い出すミュージカルの王道が展開されています。これ、トラップ一家物語に似てますね。一家で繰り広げられたストーリーが田舎の村にまでスケールアップした感じ。主人公一家はド貧乏で主人公一家の家長のテビエに威厳の欠片もないですが、伝統と慣習にとらわれた村で、それを打ち破っていく愛にカタルシスを覚える点は似てるんじゃないでしょうか。三人娘が好きになった相手と結ばれていくんですが、反対しようにも簡単に折れてしまうお人よしのテビエのキャラクターがいいですね。都合が悪いと神のせいにするわ周りに流されやすいわで非常に親近感を覚えます。肉屋のラザールとの喧嘩は楽しかった。テビエの歌も陽気で雄大で楽しいですね。
 事前の知識ほとんどなかったので、屋根の上のバイオリン弾きがなんの隠喩かよくわかりませんでした。舞台もウクライナだったんですネェ。英語喋ってるのにテビエとかツァイテルとか名前が変だし、キエフとかシベリアとか地名もおかしいなぁとか思ってたんですよ。舞台のアナフテカ村がユダヤ人の村だってのに気づくのも時間かかりました。ユダヤ人迫害されてましたが時代背景いつなんでしょ?家族がそれぞれ背負う問題の重さはトラップ一家より深刻でしたね。後半は結構重いです。歌も暗い。「最後、村人みんなで村を出て行くところもトラップ一家のラストと被りますね。トラップ一家と比べてテビエ一家やアナフテカ村の人々は救われない部分も多いので、このあと『サウンド・オブ・ミュージック』とか見ると迫力に欠くかもしれません。」ハリウッド映画なんですがハッピーエンドにもっていきませんね。一家や村の人々の今後の苦労、苦難を暗示するシーンやセリフが隠すことなくポロポロでてきます。鑑賞後の印象はスッキリサッパリとはいきませんが、渋いつくりなのでその分いい映画を観たなぁという気分には浸れるんじゃないでしょうか。「ラストシーンでテビエを励ますバイオリン弾きはとっても切ない名シーンですね。
 絵は土ぼこりが舞ったりしてますが、とても綺麗です。というか、のどかです。結婚式とか息を呑みますよ。暗い中みんながキャンドルをともす荘厳で暖かいシーンです。最近の映画ではなかなか見られないカッコいいダンスも見られますよ。後半のおも〜い展開はちょっと特殊*1ですが、ミュージカルの派手さとオーバーアクトや職人技のダンスが好きな人は是非!ドラマの作りもしっかりしてますよ〜。

*1:テビエの陽気な性格も前半の楽しい展開も、後半の重さを薄めると言うよりむしろ強調になっている感じです。