ビデオドローム

ビデオ・ドローム [DVD]
 こ、これは・・・。
 途中から話が支離滅裂になっていく上に、ネチョネチョベトベトしたグロ映像、さらに映画全体の重苦しい雰囲気から「もって一時間半だな」と思っていたら、やっぱり一時間半で終わりました。疲れたぁ・・・。
 本作はデビッド・クローネンバーグの代表作らしいですが、代表作だけあって、非常に力強い。生々しい肉感に包まれた世界観は圧巻で人によっては食欲なくしますね。終盤になるに従って世界観の狂いっぷり、肉感はエスカレートしていきます。スプラッター描写も多いのですが、音楽も映像も重いので「おおおおお!」ではなく、「うえぇぇぇ」という感覚を覚えます。クローネンバーグは変態だと確信せんばかりの奇想に満ちており、ビデオドロームが生み出す狂気の幻想は見所が多いです。無機質なものが肉体感覚を得ていく描写は「何考えてんだクローネンバーグ」と眉ひそめたくもなりますが、奇想の迫力に圧倒されるばかりです。
 結局ビデオドロームの仕組みはよくわかんないし、途中からストーリー追えません。主人公と一緒に現実と幻覚の狭間を漂うのみです。ホラーは時としてあまりに非現実的でファンタジックな側面を併せ持っていますが、現実と非現実の中途半端な位置にゆらゆらと立っているような幻覚映画は観ていて本当に気持ちが悪い。西洋人は自分を見失うのをひどく嫌うといいますが、錯乱感覚に陥ったような幻覚映画はこうしたツボをついていたために評価を得たんでしょうね。ホラーって不快感を楽しむ側面もありますよね。
 ・・・ストーリーの解説しようかな。ビデオドロームってのはポルノ映画のジャンルの一つで拷問や殺人を筋なしで永遠と流すものらしい。(性的快感は突き詰めれば痛みであるなんてヘルレイザーみたいな設定だなぁ。ホラー扱ってると考えてしまうことなんだろうか。)で、主人公はポルノ番組を流すテレビ局の社長で、新しいジャンルとしてビデオドロームに興味を持つわけ。しかし、ビデオドロームは単なるポルノではなく、観たものに幻覚を呼び起こし、果ては破滅へと導くものであった・・・。途中からビデオドロームの解釈は変わるし、結局何も解決されないのでクローネンバーグの幻覚魔術を楽しむことが全ての映画でした。
 ストーリーはあまり工夫せずに、アイデア勝負の野心的な映画ってのは嫌いじゃないです。映画全体が負の抑圧感に満ちてましたが沸々と煮えたぎっているエネルギーは誰しも感じることが出来ると思います。にくにくうねうねする映像に恐れおののいてください。
 
 主人公のおっさん。すごく見覚えがあるぞと思ったら、先日観た『ヴァンパイア-最後の聖戦』でも主役を張ってたのね。ジェームズ・ウッドの主演映画って、そんなに多くないのに連続して観ていたのはちょっと驚きでした。