惑星大怪獣ネガドン(2005)

惑星大怪獣ネガドン [DVD]

惑星大怪獣ネガドン [DVD]

 趣味は大なり小なり心のよりどころになるから、生きがいなんかに転じることがあるんでしょう。それが、映画であって、自分でも作ってしまおうとすると、野心だけでなしに「自分の世界を認めさせてやるんだ」という怨念じみたものもでてきたりするものなのかもしれません。とりあえず、この映画からは少なからずそういうものを感じてしまいます。
 これは怪獣特撮オタクが音楽と声優以外を全部一人でやってのけたフルCG映画。とても一人で作ったとは思えない、画質への恐るべきこだわりはただただ感心するばかりです。この人、画面の粒子の粗さや、カメラに落ちてくる水滴まで表現してしまうんですから、彼の特撮愛というのは並々ならぬものを感じる。一念岩をも徹すってやつですね。
 怪獣、特撮関係には全く詳しくなくて、そういう話題になってもフンフン聞いてるだけの僕ですが、この映像には圧倒されてしまう。「オタクになったけど、あまりにハマりすぎて、居ても立ってもいられなくて、思わず作品を作っちゃった」程度の熱意じゃない。「ここまで作ったぞ!文句あるか!」みたいな覇気を感じる。これは悪いことじゃないですよね。こういう純粋な人って、高校時代にはいっぱいいましたよね。歳を経ると数がどんどん減ってくるのが面白くない。
 しかし、全部一人で作ってしまったためか、間延びした演出や、ちょっと陳腐なストーリーが乗れない。愛は伝わるけど、それはわりと前のめりで、見えていて危ういし、気恥ずかしさを覚えてしまう。映像は細部までこだわりを感じられるだけに、脚本がまずいのは残念。
 ちょっと小さくまとまってるところも残念。苦労したインディー映画というと、『イレイザーヘッド』や『バッド・テイスト』あたりが思い浮かぶけど、特に『バッド・テイスト』あたりは、なんでこんな下品な映画に5年もかけてんだ!という感動がありました。
 煽り映像が余りにも大げさで、思わず買ってしまったのがちょっとだけ悔しかったです。