ダーク・スター(1974)

ダーク・スター [DVD]

ダーク・スター [DVD]


監督・製作・音楽:ジョン・カーペンター
脚本:ジョン・カーペンターダン・オバノン
出演:ダン・オバノン

■ストーリー
 人類の未来のため、宇宙に飛び立ったダーク・スター号。任務も長いもので20年の歳月が流れてしまったが、地球は興味を失ったのか、予算を削減し、補給物資も全然よこさない。長い航海で船内はあちこちガタがきてるし、船長はワープの事故で死んでしまった。ペットのエイリアンは生意気で、人工知能も変に人間臭くて扱いにくい。
 四人のむさくるしい男どもの宇宙航海をゆる〜く描いたSFブラックコメディ。

 『遊星からの物体X』『ハロウィン』『ニューヨーク1997』と、カルト映画の傑作を次々と作り上げる監督ジョン・カーペンターの処女作*1。この人は本当に何でも撮れますね。他のどの映画とも違うシュールなコメディになってますが、これが結構笑える。
 序盤の間延びしまくったダルダルな展開はどうなるかと思いましたが、手造り感満載の可愛いエイリアンがでてきてからテンポがよくなってきます。まん丸な風船のように見えるエイリアンは、異星人というより既製品なんですが、エレベーターでの攻防は微笑ましいものがあります。どこからみても低予算な精一杯のアクション。しかし、風船エイリアンから、可愛いけど、実は意地悪な生き物という人格を生み出したのはさすが。お金がないけど、アイデアで魅力的な絵を作るという姿勢は好きです。
 宇宙船の独特の狭さを利用した魅力的なアクション作りは『エイリアン』に通じるのかな?エイリアンは飼い主のダン・オバノンを散々翻弄し。遂にオバノンはブチ切れ。5年後に『エイリアン』の原案を作り上げるのでした。ジョン・カーペンターは『エイリアン』は『恐怖の火星探検』(1958)のパクリだと、ダン・オバノンをパクリの天才だとボロクソに言ってます。オバノンとエイリアンの攻防は『エイリアン』を連想させるシーンですが、一連の展開を考えたのはオバノンもカーペンターも、お互いに「オレだ」といって譲りません。仲が悪いなぁ...。
 でも宇宙飛行士で最も目立つのはダン・オバノン演じるピンバック軍曹なんですよね。ドジで空気が読めないのに、自信過剰で恩着せがましいという、なかなか魅力的なダメ人間になってます。
 マザー・コンピューターや爆弾20号といった、すごく人間臭い人工知能も魅力的。基本的に主人公の周りは人間も機械も全然役に立たないのですが、これが絶妙にシュールな空気を作り出してる。
 映画に妙にしっくり来るシンプルなデジタル音楽は、やはりジョン・カーペンター。この映画って文字の表示音など、電子機器の音を含めて、全体的に音がシンプルなんですよね。
 すごく幻想的でカッコいいエンディングですけど、これはレイ・ブラッドベリの"Kaleidoscope"からインスパイアされた部分が、かなり大きそうです。ブラッドベリってよく聞く名前だけど、今度小説読んでみようかな。SFって底なし沼の印象あるから、手を出しにくいんだけどね。

*1:短編だと本作より前に『ブロンコ・ビリーの復活』(1970)って映画の製作に携わってます。これはアカデミー短編賞受賞。この頃は才気がほとばしってたんですね。