キング・コング(2005)

violent_jef2006-01-14

 ごめんなさい、ごめんなさい。ピーター・ジャクソン様ごめんなさい。半年ショックを受け続けてた『ブレインデッド』、DVDすら購入してなくてごめんなさい。『乙女の祈り』はつまらないと言ってごめんなさい。『キングコング』を撮ると聞いたときは「正気か?面白くなるのか?」と疑ってごめんなさい。
 もうね、もうね、『キング・コング』最高。
 他の多くの観客と同じこといいますが、コング カッコよすぎ。今どき一目ぼれで命かける男なんていませんよ。背中で語る強いけど不器用な男なんて無粋ですよ。しかし、もう描写が困難な強い男の魅力を大猿を使って表現したのがキング・コングなんですよぉ!愛するもののために全てを投げ出して戦いに挑むコング。なんと夕陽の似合うことか。
 基本の軸はインテリの脚本家と力のコングによる愛の争奪戦です。これも中世の決闘みたいで古すぎ。だけど、きょうび愛のための争いなんて逆に新鮮じゃないですかね。インテリとコングがにらみ合うシーンに痺れたのは僕だけですか。
 この映画は当然コングに大幅に肩入れしてます。だって一途で強くてカッコいいもん。普通はコングを選ぶでしょ。毛深くて臭くてやだって?男は見た目じゃないんだよぉ!女を守れないインテリは負けなんです。
 「コングがインテリをぶっ潰した後、アン・ダロウが迎えに来るのは男泣きのシーンです。最後までたった一人で戦い抜いたのも偉い。遂には愛するもののために死んでいくコング。死に際に愛するものに寄り添うのは騎士道の美学ですね。
 

 ず〜っとキング・コングを撮りたかったピーター・ジャクソン。今回の大ボリュームにはいままで撮ることが出来なかった彼の怨念をひしひしと感じますよ。確かにいつも以上に筋運びが強引。確かにいつも以上に描写が長くてクドい。しかし、今回はそれだけ監督がのびのび好きなことをやっているということですよ。普通に考えて怪獣映画に3時間超の尺なんて前代未聞でしょ?
 『さまよう魂たち』でもわりとノビノビやってた感はありますが、まだまだおとなしかったピーター・ジャクソン。今回はいよいよ俺色むき出しの大混乱を画面いっぱいに展開します。ゾンビ映画の大傑作『ブレインデッド』を撮った修羅がいよいよ帰ってきた!
 特に髑髏島編は秀逸。はじまりこそ『ジュラシック・パーク』でも始まるのかと心配でしたが、杞憂でした。パニックアクションを撮らせたら右に出るものはいないってくらい、ものすごい想像力を発揮する監督だけに、ブラキオサウルス大行進もコング対V-REXもおもちゃ遊びやってるだけでは思いつかない動きが次から次へと繰り出してきます。恐竜が「押し合いへし合いしながら全力疾走する下を人間も走る」なんて狂気なアイデアはどこから出てくるんだ。コングの戦いも燃える演出で、「うひょうひょ」と変な声上げながら喜んでましたよ。
 暴走型ブラックジョークも健在。インテリ一行がコングに谷底に落とされるシーンは『ブレインデッド』よろしく暗くてせまっくるしいアクションとギャグが入り乱れてます。「触手モンスター」はやりすぎ。露骨過ぎて笑ったけど、大丈夫なんだろうか。監督は妙な文化摂取でもやったんだろうか。
 
 髑髏島に着くまでが重要なシーンが少ない割に長すぎなんだけど、いいんです!脇役に対しては相変わらず無慈悲なんだけど、いいんです!愛あり、涙あり、笑いあり、格闘あり、蟲ありと、お腹いっぱい大満足の三時間(超)でした。