殺しのドレス(1980)

殺しのドレス スペシャル・エディション [DVD]

殺しのドレス スペシャル・エディション [DVD]

ヒッチコック好きのブライアン・デ・パルマによる『サイコ』のリメイク。
タイトルが非常にカッコいい上に内容ともはまってます。

■ストーリー
夫に不満を持つケート・ミラー(アンジー・ディキンソン)。精神科医に相談するも、ついつい医者を誘惑してしまう。そんな欲求不満の人妻は美術館で行きずりの男に誘惑され、ついていってしまう...。翌朝、ケート・ミラーは死体になっていた。第一発見者の娼婦リズ(ナンシー・アレン)、ケートの息子ピーター(キース・ゴードン)、精神科医エリオット(マイケル・ケイン)らは各々思い抱くところあり、独自の行動を開始する。果たしてケートを殺した"金髪の女"の正体とは。

 さすが映像監督デ・パルマ。映像がいちいちカッコいいです。
 特に最初の美術館のシーン。男女の駆け引きをセリフなし、動きの映像だけで表現した場面はしびれますよ。ケートが倫理観と欲望の間を行き来する様子が少ない動作でわかりやすく伝わってくるんですが、男もホイホイ乗っかってこずに駆け引きを楽しんでくるので、この場面、エロカッコいいことになってます(エロカッコいいって響きが下品だな)。
 デ・パルマの映像って得意の長回しに象徴されるように、なめるように場面を追っていて、これが接写になると非常にエロいんですが、結構セクシーな映画だけに相性がいいですね。当時デ・パルマの奥さんだった娼婦リズ役のナンシー・アレンは魅力的でセクシーに描かれてます。一番ビックリなのは人妻ケート役のアンジー・ディキンソン、脅威の49歳なんですが。見えねぇー!さすがにシャワーシーンは影武者が入っていたようです。ピーターの盗聴器から"金髪の女"の剃刀までエロい。
 これがケート・ミラー殺害シーンになると、すさまじい緊迫感をかもし出します。不安な前フリから唐突な悲劇。これはもう上手く説明できないのが悔しいくらい素晴らしい。ナイフへの執着とか、選んでくるショットがカッコいいとか、平易な語彙ではとても説明できません。前々からカッコいい映画撮る人だとは思ってたけど、やっぱりデ・パルマはすごいですね。僕の中でお気に入り監督になりましたよ*1
 サスペンスとしても程よい短さ、リメイクでも脚本にオリジナリティがあり、『サイコ』知ってる人にも配慮があります。犯人に気づいた頃には一気にクライマックスまで畳み込まれてしまいました*2。良作です。満足。
  
以下、IMDbで気になったことのメモ
 ハリー・ポッターにそっくりな少年探偵ピーター役のキース・ゴードン、魔法使えなくてもマニアックな機械知識で独自の捜査を進めますが、これ若きデ・パルマが実際にオヤジの浮気調査をしたのが元になってるそうです。ははあ、ピーターにデ・パルマは自分を投影してるのね。だから「ピーターはリズに惚れる」のか、道理で不自然なカップルだと思ったよ!
 容疑者のボビー、「リズを尾行する金髪女性ルース刑事と一人二役です」。細かいミスリードですなぁ。

*1:エスタデー・ワンスモア屈指の名文『ファントム・オブ・パラダイス』を読んでみたいんですが、秘宝さん

*2:犯人を確信したのは「エリオットが精神病院でボビーを語る」シーン。多分『サイコ』観た人が犯人を確信する最後のシーンでしょう。次がもうクライマックスだし、まんまとやられた。