ハロウィン

ハロウィン Extended Edition [DVD]

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■ストーリー
 幼児期に殺人事件で精神病院に隔離されていたマイケル・マイヤーズ(ニック・キャッスル)。彼の主治医のサム・ルーミス(ドナルド・プレザンス)はマイケルの危険性を常々主張しているが、病院側も司法も聞き入れることはない。そして、マイケルが殺人を犯したハロウィンの日から15年、病院から脱走したマイケルは故郷のハドンフィールドに向かう…。

 ハロウィンに『ハロウィン』を観るという乙なことをやってみました。レザーフェイス、ジェイソンに続き、ようやくスラッシャー*1御三家をひと通り触れたわけですね。スラッシャーはあまり好きではないので手が伸びなかったのですが、なかなか楽しめました。
 マイケル・マイヤーズことブギーマンの存在感はまた他のスラッシャーのモンスターとは違った魅力があります。幽霊のようにすっと現れては消える不気味さがたまりません。静かなモンスターというのはなかなかどうして独自性があるんですよね。
 暗闇から白く浮かび上がるマイケルのマスク。この映画の魅力は叫ぶほどじゃないにせよ、ゾクゾクっときてしまう不安感にあると思いますが、郊外にぬっと出現する白いマスクは非常に違和感がありますし、不気味です。
 音楽もマスクの造形も非常にシンプル。しかし、シンプルながら妙な存在感はあるし、この不気味さは今にも通じるところだと思います。一度聞いたら、一度見たら忘れないです。それでいて決して安さを感じさせないのは静かな世界観に統一されたためでしょう。
 カーペンターのインタビュー*2では殺される瞬間よりそれまでの過程を重視したと語ってますが、確かにマイケルが姿を見せては消える不気味な雰囲気はカッコいいです。妙に存在感のある音楽もカッコいいですね。どっちかというと、殺し屋が騒々しく暴れまわってるほうが楽しいですが、マイケルのストーカーばりの不気味さも捨てがたいところです。マイケルは初めは遠くのほうからこちらを見つめてるんですが、徐々にその距離を縮めていきます。マイケルが追い詰めているのは登場人物じゃなくて観客のほうなんですね。殺しのシーンは実にあっさりしてます(というか、ない)が、そこに至るまでの過程に力が入っているのは確かにうなずけます。
 
 「My nightmare」さん(音が出ます)によると、ハロウィンにはTV版、劇場公開版、エクステンデッドエディション版の三バージョンあるみたいですね。「はまぞう」でこの記事に貼り付けてるのはエクステンディッドエディション。評判がいいのはこちらのようです。
 マイケルがほとんど暴れないし、さほどタフでもない*3ので、僕が見たのは「TV版」だと思います。静かで不気味な雰囲気のままクライマックスまで引っ張りに引っ張りますが、肝心のクライマックスシーンでは特徴的な巨大出刃包丁が駆使されることはありませんでした。これはかなり残念。非常にカッコいい長回しのオープニングの印象に勝るシーンはありませんでしたね。
 セリフがかなり少なく、カーペンター音楽の自己主張が激しいのでパーティー映画に向いていたんでしょう。これだとセリフの合間に突っ込みを入れやすいです。『スクリーム』の連中みたいにホラーの法則語ったり、ストーリーを予測したりするのが、今の楽しみ方なのかもしれません。
 一人で見ていると山が少なく、クライマックスまで静かで不気味なままなのでカーペンターのかもし出す雰囲気にのれるか否かが鍵になるでしょう。人によってはダルさを感じるかも。
 セックスしたら死ぬ、タバコ、麻薬もタブー、「また戻ってくる」と言ったら助からないというスラッシャームービーの法則の王道をいってますが、あなどれない独特の雰囲気をもってます。以後、エルム街や13金に引き継がれるスラッシャーのはしりです。一見の価値はあり。
 
 
…初代スクリーミング・クィーンとされるヒロインのジェイミー・リー・カーチスですが、とても高校生に見えないほかは、あまり印象強くなかったです。スクリーミング・クィーンだと『悪魔のいけにえ』のヒロインの印象がやっぱり強いですね。
…第一戦で早くも「マスク剥ぎ。素顔が普通だったのには」仰天。

*1:超人的な殺人鬼が軽薄なハイティーンを斬殺しまくるホラーのジャンルです

*2:『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』pp.106

*3:いや、十分タフですが、例の気絶シーンはやっぱりショックです