ギミックの帝王の魂も鎮めることが出来るか!?

ゴーストシップ 特別版 [DVD]

ゴーストシップ

■ストーリー
マーフィー船長率いる北極救助船のチームはある日、謎の船の調査を頼まれる。それは1962年に突如消息を絶ったイタリアの豪華客船アントニオ・グラーザ号であった。船に乗り込んだチーム唯一の女性エップス初め、皆は様々な怪奇現象を察知する。薄気味の悪さを覚えたチームのメンバーは早いとこグラーザ号から引き上げようとするのだが…。

 
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 ホラー専門(!!!)の映画制作会社、ダークキャッスル第三弾の作品ですね。製作にハリウッド娯楽大作の大物ジョエル・シルバーロバート・ゼメキスが今回も控えています。ダークキャッスルの名をあげた貫禄の一本ですね。面白い。
 ストーリーは本当に単純。物語に深い意味はなく、スケールのでかいスラッシャー映画です。幽霊船のギミックをこれでもかと見せておいて、物語は終盤で一気に畳み掛けてくるのでストレスを感じない娯楽に徹したホラー映画でした。
 その分、映像やギミックへの手の込み具合は尋常でないものを感じます。見せるべきところに力をいれ、余分なところはどんどん省く。選択と集中が効果的に作用しているためアメリカのホラーはリズムとパンチがあるんでしょう。名作でなくてもソコソコ楽しめるところがいいんですよね。
 とにかくこの映画の素晴らしさはギミック(仕掛)に尽きます。幽霊船の中にある様々な小道具が色々なことを引き起こしてくれるわけです。小道具が「幽霊船ならでは」の生かされ方をしているのがグッド。フック、プール、ダンスホールと力の入った映像が生きる仕掛が随所に施されています。ここで何を起こすんだ、これは何か引き起こしちゃうんじゃないの、と観客は仕掛の組み込まれた映像に引き込まれていくのです。
 一つだけ例示しますと、プールが血で満たされていく仕掛があります。最初は穴の開いた廃墟なのに、穴から血がとくとくと沸いていき、血で満たされたプールにはいつの間にか死体が沈んでいるのです。これは一つの仕掛に時間を割いてゆっくり見せた例ですが、これに限らずギミックの見せ方に関して緩急のつけ方は上手い。プールが血で満たされるまでは時間をかけ、何かが起こる嫌な予感を観客に持たせます。観客がしばらく何が起こるか妄想しちゃった上で、プールは一気に血で満たされカメラはプールの底に沈んでいきます。観客に映画製作者の発想が挑むというやり取りが生じているので、ホラーに慣れた人も初心者も刺激的な時間を体験することが出来るわけです。最近はCGの発達でどんな映像でも再現可能になってしまいました。映画のスケールは拡大し、やや地味なギミックは生かされなくなってきている傾向かもしれません。しかし、小道具や舞台を利用した、ちょっとこじんまりの仕掛が作用していくのを見ると、どこか懐かしく、またワクワクしてしまう自分がいるわけです。
 道具やセットに気を配るのは映画として当然なのかもしれませんが、もうひと踏み込みして、個々の道具やセットにも存在感を持たせることが出来るのもホラーの得意分野でしょう。そして、ギミックの帝王たるウィリアム・キャッスルへのオマージュとして設立されたダーク・キャッスルだからこそ、ここまでギミックを効果的に生かすことが出来たのではないでしょうか。
 がんばれ、ダーク・キャッスル!『ゴシカ』がコケてもへこたれるな!
 
…『トゥームレイダー』、『狼男アメリカン』、『ポルターガイスト』、『シックス・センス』、アルジェント映画などを髣髴とさせる映像が随所に。ホラーマニアと指摘しあうと面白いかも。
…本作最大の見所は敢えて全く触れませんでした。かなり衝撃的なのでお楽しみに…。