テキサス・チェーンソー

テキサス・チェーンソー コレクターズ・エディション [DVD]
 スラッシャー・ムービーの原点にして大傑作『悪魔のいけにえ』のリメイクですね。どんな作品であれ、リメイクを観る際に重要なのは「原作に固執しない」ことでしょう。期待しすぎたり、原作と同じシーンや場面を比較しようとするとどうにも楽しめない気がします。多かれ少なかれ視点があらさがしに変わってしまう側面はあると思うんですよ。特に『悪魔のいけにえ』は画像の悪さ、音の少なさ、スケールの小ささに役者に演技ができないことから生じたスクリーミング・クィーンの登場と様々な要因が重なってできた偶然の産物的な側面もあるので、ハリウッドで高い予算をかけて作り直すのは難しいんじゃないの〜?なんて不安はありましたね。
 で、本作『テキサス・チェーンソー』なんですが、結構原作をいじり回してて、なかなか楽しめる映画になってましたよ。まず、若者たちが殺されるシーンが長い。原作ではヒロイン以外はさっさと処理されてしまうんですが、本作ではこれでもか、これでもかと非常にネチネチしています。レザーフェイスも一度ターゲットを捕獲するとなかなか殺さないところがエグい。痛さを感じさせる場面は随所にでてきます。エグくて痛い映像は結構迫力あるところ、さすがCM出身の監督といったところですか。例えばヒッチハイカーの一連のシーン。序盤のカメラの引きから異常なテンションを高めてきます。血の質感をひたすら伝えてくる映像は執拗でエグイ。スプラッター度は結構高いです。スプラッター映画みたいにグシャグシャベチョベチョしてなくて、歯とか肉片とか細かい部位をネチネチ撮ってるので逆にリアリティがあって痛いんですよ。R指定になるのもわかります。
 前作ではひたすら、ただひたすらレザーフェイスとヒロインが追いかけっこするシーンが見所でしたが、本作の逃げ隠れは定番ムーブが続き、特に目新しい点はないです。本作の映像とテンポで原作と同じことやったらさすがにきついと思うので、見所を別に移したのはいい判断だったと思います。
 レザーフェイスの家族(本作ではヒューイット一家)の団欒は今回あっという間に終わりましたね。おじいちゃんもかなり元気なので期待しないように。
 そして、今回MVPはなんといってもハートマン軍曹ことR・リー・アーメイの狂ったシェリフでしょう。一連のシェリフの罵倒はアーメイのアドリブなんでしょうか。本作のセリフは基本的にイケてないんですが、アーメイの罵倒は不快と高揚感を極限まで高めてくれます。監督もわかってるね。アーメイの罵倒は観てるこっちにまで怒りを誘発する魔力を秘めています。アーメイのシェリフは基本的に罵倒だけで何もしてないにもかかわらず暴力的な場面をつくりあげてくれますねー。世間の常識が全く通用しないとんでもないところに迷い込んじまったという絶望感*1が最も表現できてたのもアーメイの場面でしたねぇ。
 ラストも素晴らしいですよ。ここは多分監督もノリノリですね。二段階のオチがあるんですが、どっちも最高(どちらもどんでん返しでもなんでもないですよ)。特に二度目のオチはオープニングのメッセージにアクがなかっただけに溜飲が下がる思いでした。「この映画は何から何までぜーんぶ狂気なんだ!」という開き直りのエネルギーに恐怖と高揚感を覚えるのがレザーフェイスシリーズの真骨頂だと思うんですね。本作のエンディングは原作とかけ離れているとはいえ、これを爆発させてくれた感じがするので僕は満足です。
 スラッシャー・ムービーではかなり面白いほうですが、スプラッター度も結構高いので注意。倫理にも結構無頓着な鬼畜映画なのでその辺きちんとわきまえて観られる人なら楽しめると思います。
 
最後に。ジェシカ・ビールのおっぱいがやたらでかくてびびった。でも、おっぱいをやたら画面の中心に持ってくるエロいカメラはなんとかしろよ。

*1:悪魔のいけにえ』シリーズでは、ここ重要。この映画でも全体的にこんな場面が多かったでしょ。