アンブレイカブル

アンブレイカブル [DVD]
 やべえ。これはおもしれえ。
 アメコミのヒーローを描いたんじゃなくてアメコミヒーローに抱く妄想を描いた点がすっごい異色。しがなくて情けないオヤジをやらせたら右に出るものはいないブルース・ウィリスが、自分はヒーローじゃないのかと段々確信していくまでが静かながらこっちもワクワクさせる展開になってよし。
 主人公がなさけないオヤジなところが最後まで不安を抱かせていいね。マトリックスのキアヌなんてどうみても疑いなく救世主だかんね。ウィリスがヒーローであることを示唆する人間がサミュエル・L・ジャクソンなのも最高。パルプ・フィクションでは情けない男を演じてたけど、本作でもオーラを大幅ダウン。胡散臭いオタクオヤジを熱演してます。これもマトリックスのカルト教祖のような神秘性をかもし出していたローレンス・フィッシュバーン演じるモーフィアスと比べると面白いでしょう。サミュエル・L・ジャクソンだと黒いレザーでカッコよく全身を包んでも不自然でパチ物感が拭い去れません。シャマランは俳優のチョイスが最高ですな。
 M・ナイト・シャマラン監督はどの映画でも自分を出演させているんですが、本作でもバレバレ。一人だけ顔の濃いインド人が混ざっているんだから見逃すほうが難しい。今回は映画の本筋とは全然関係ないところででてきてましたね。ヒッチコックよりは大分難易度が低いです。
 音楽も展開も静かなんですが、観客を映画に引き込ませるのは決定的な謎を最後まで残し、テーマ自体も意表をついてくるシャマランのストーリーテリングの賜物でしょう。本作はシャマラン監督の中ではあまり当たってないほうだと言われてますが、わかりやすい展開と見やすくて綺麗な演出を見ると、やっぱりスゴイ監督だよと再認識させられます。
 で、オチです。ビックリするオチといえば、シャマランであり、シャマランといえばビックリオチ。今回は笑わせてもらいました。ストーリーを追っていて、ちょっと引っかかってた点が見事に解決されました。今回はがんばればオチが読める人いるかもしれません。アメコミヒーローが現実にいるかもしれないという非現実的なテーマから観客を引き離さないギリギリの現実感を保ったすばらしいオチだと思いますよ、私は。
 本作自体の魅力もそうです。非現実感と現実感のギリギリをさまよう不安感を最後まで保つ緊張感が本作の魅力でしょう。可能性は強いんだけど、確証がない。そういった神秘性に、人間は強くひきつけられるものがありますが、シックスセンス以来、シャマランのテーマはこうした神秘性が一貫したテーマになってますね。謎がある限りオチはないといけないわけで、ここでくっきりとオチを作ってしまう上、ヘタに上手いオチを作るので、シャマラン=オチという構図が観客の頭にこびりついてしまったんでしょう。シャマランが持ち出す神秘的なテーマや雰囲気は心地よいので、これからはシャマランの動きもチェックしてみようかと思います。