フェノミナ

フェノミナ インテグラルハード完全版 デジタル・ニューマスター [DVD]
 やばい。虫やばい。
 ダリオ・アルジェントの『フェノミナ』というと、何といっても、虫!というか、ウジ・蝿のオンパレード。グロさよりもキモさが気がかりな映画。虫が苦手な人は本当に見ない方がいい!僕も鑑賞前からある程度覚悟はしていたけど、まさかこんなにウジだらけの映画とは思わなかったよ...。
 始めに出てきたのは蜂でした。蜂が入り込み、パニックに陥る車内。「殺さないで!その子は悪い子じゃない!」とナウシカばりのセリフを発する主人公ジェニファー。しかし、蜂はジェニファーのもとにとまると落ち着くんです。手のアップでは明らかに蜂は手を刺しているんですが...。そのあと、死を感じさせるシーンではこれでもか、これでもかとウジのラッシュ。床にウジ、手にウジ、爪の中に入り込もうとするウジ...。「やだ!」とジェニファーは急いで手を洗います。お前虫が大好き違うんかと。手を拭くとタオルにもウジ。これはお約束。ジェニファーがピンチになると助けに来る虫もなぜか蝿なんです。アルジェントが『虫愛ずる姫君』をモチーフにしたかはしりませんが、なぜか登場する虫はかなり偏ってますね。蝿と戯れる美少女という絵はすごくシュールです。
 主人公ジェニファー役のジェニファー・コネリーは美しかったですね。純真な感じがしてホラー映画にぴったりです。衣装も白くて天使のようなヒラヒラした服が多いのも意図したことでしょう。ムチムチして本当にハイティーンみたいだし、男っ気も全然ないし、髪が真っ黒で神秘的です。セクシーショットが全然ないのもいいね。そういえばこの映画、女の子は結構たくさん登場しますが、映画全体を通じてセクシーショットはゼロ。美少女を見たら脱がせたくなるのは普通のエロ親父ですが、アルジェントの場合、血だらけにしたり、ウジぶっかけたりしたくなる変態なんでしょう。そういえば『サスペリア』も女の子はいっぱい出てくるけど、ストーリーに関係なくプールのシーンがあった他は、有刺鉄線に放り込まれたり、血だらけになったりと、ひたすら女の子がひどい目にあっていたな。
 映画自体はとってもファンタジックで楽しめました。虫を愛し、心を通じ合わせることの出来る少女という設定、まったく現実感を覚えない、というか支離滅裂なストーリー、そして変態ダリオ・アルジェントの感性が上手く融合していたといえるでしょう。じっくり語るような作品でもないけど...。『サスペリア』そっくりのオープニング、セリフがメチャクチャで役者もみんな大根だったときは頭抱えたけど、後半になって慣れてくると強烈な映像ラッシュが目立ってきて気にならなくなります。
 女の子が殺される理由が結局わからないとか、前半散々時間を割いておきながら、空き家の意味が全くないとか、主人公が夢遊病になる理由がわからんし解決してないとか、ストーリーの細かい部分は首をひねっちゃうところは少なくないんだけど、アルジェントの映画はそーゆーところに目を向けてはいけなーい!変態監督の異常な演出を楽しむのみです。最後のほうでは蝿の大群に感動するようになりますよ。ジェニファーの美しさとのギャップがたまらんとか思い始めたらもうアルジェントの虜なのです。というか、そうじゃないと楽しめんよ。
 虫は特殊な演出とかで殺すフリにすることが出来ないので、劇中、殺人大サービスなのに虫の命が大変尊重されている様子にとっても違和感を覚えます。命の価値が虫>人間になってる感じ。アルジェントはさすがにそこまで鬼畜じゃないんだろうけど、映画自体は鬼畜になっちゃったね。まぁ、虫愛ずる映画らしくていいんじゃないでしょうか。
 
 ラストの洋館のセットって、学校と同じ施設ですよね?さすがに無駄にでかすぎですよ...。