何がジェーンに起こったか?

何がジェーンに起ったか? [DVD]
 さて、ホラーですよ。またまたホラーですよ。そこ、またB級ホラーだろとかいって顔しかめない。ストーリーも演出もガッチリ作りこまれた名作でした。細部まで完成度は高く、ホラーでは久しぶりにウムムと唸らせる良作でしたよ!
 最近はだんだん新作から遠のいており、観てる映画も80年代以前のものが多くなってきましたが、今回はとうとう60年代初頭、バリバリの白黒映画までさかのぼってしまいました。主演の二人の女優さんはどちらも超大物らしいんだけど、60年代までさかのぼられると全然わかりませんわ。音も映像もあんまりよくないんだけど、これはジェーンの狂気を際立たせており、かえってよかったですよ。
 また、「狂気」がでた。最近映画をレビューするとまたよく出てくる言葉ですよ。僕も使いすぎだなと自粛してましたが、この映画はど真ん中「狂気」を扱う映画なんだから仕方がない。才能ある女優の姉に妹が嫉妬していくという話なんですが、妹が狂気に走る理由も姉に対する憎しみがエスカレートする過程も大げさすぎず丁寧な脚本作りがされてます。
 二人の美人姉妹ジェーンとブランチはどちらも女優さん。妹のジェーンは子役時代にベイビー・ジェーンとして大活躍。一家を支えるスターでした。しっかりものの姉のブランチは妹への感謝の気持ちを胸に刻み込めるのです。そして10年後、ブランチは大ブレイク。"失われた才能"ジェーンにも仕事を回すのを忘れません。そして、ある日のパーティーで、ブランチは何者かに車に轢かれ、一生車椅子生活をおくることになったのです。(ここでオープニング。これは結構盛り上がります。)舞台はそれからさらに数十年後。姉妹はひっそりと二人暮し。ジェーンはブランチから金銭的援助を受けながら、世話をするのです。しかし、昔の栄光が忘れられないジェーンは徐々に理性を失っていく・・・。
 昔のハリウッド映画って、脚本が丁寧・単純・わかりやすいと三拍子きてるから大好き。派手さはないけど、ジェーンがブランチを徐々に追い詰めていく過程は息が詰まります。どれも既視感のある演出なんだけど、見慣れてるから王道なつくりに感動するのかね。いじめの描写はいじめそのものよりジェーンがかもしだす緊張感にキーがあるのかもしれない。ジェーン役の人は本当に怖い。モノクロじゃないとでない怖さです。過去の栄光にすがるシーンとか最大の見所でしょう。おばあさんが少女のドレスを着て恍惚とした表情で歌うんです。己の王国を作り上げてそこに閉じこもっている人がかもし出すオーラがでてます。映画ながら僕も引いた。これは怖い。映画がすすむごとにエスカレートすんのよ。終盤とかほとんど少女だよ。そりゃ引き込まれるわ。
 姉のブランチ役の女優さんも大物で、彼女を擁護する声も聞かれますが、やはりジェーンの魅力の前にはなすすべなしってかんじです。後半ほとんどセリフも演技の見せ所もなくなっていったのは、監督の判断でしょうか。賢明です。確かに前半の必死なブランチやラストのジェーンとの対決は目を見張るものがありましたが、白髪白面の幼女の迫力には及びませんでした。
 エンディングはどんでん返しつきでキレイに終わります。ラストシーンでもう一撃ググってくるものがあるけど。これもジェーンの魅力に押された感じがするなぁ。
 やっぱり僕はビックリするものよりもジワジワくるようなホラーのほうが好きだわ。同じような趣向を持つ方はどうぞ。これは古いけどオススメよ。
 最後に。。。この映画『ミザリー』に似てる似てるっていうけど、『ミザリー』はこの映画のパクリ違うの?無関係では済まされないくらい似てるんだけど・・・。*1

*1:そういえばキャシー・ベイツも普通のオバサンと見せかけて、どっこいバリバリの狂気炸裂というギャップをみせるのが得意でしたね。