ECW!ECW!

WWE ECW ライズ・アンド・フォール [DVD]
The Rise and Fall of ECW
なっが〜いドキュメンタリー部分鑑賞完了。
 評判どおりのこってりした作りになっていました。アメプロをある程度知っていないとまるで楽しめない仕様ですが、「ECWの試合なんてみたことないよ〜。」というアティチュード以降のアメプロしか知らない僕でも楽しめる作りになっていました。月曜夜の視聴率戦争について、ある程度の知識があれば大丈夫です。
 ECWという団体とは何か。キーワード登録したので、大まかな情報はそこに書いておいたのですが、1990年代、WWFWCWという二大メジャー団体がしのぎを削っていたんですが、そこに彗星のごとく現れたハードコア団体がECWなんです。設立間もないインディー団体なので、テリトリーもフィラデルフィアと超狭く、全国放送なし、PPVなし、当然金もなしというひどい状態からのスタートだったんですが、天才マネージャー、ポール・ヘイマンの経営戦略により、カルト的な人気を得て、PPV、全国放送を獲得、さらにはWWFと提携して事業を展開するほどに発展するのです。このDVDはそんな熱い団体、ECWの栄枯盛衰を振り返る内容になっています。
 まずは、ECWを支えた主な選手たちの紹介から。タズ、サブー、テリーファンク、トミー・ドリーマー、カクタス・ジャックといったアメプロファンにはおなじみの選手から、サンドマン、レイヴェン、シェーン・ダグラスなど、名前は知っているけれどもいまではなかなか見かけられないECWを象徴する選手の活躍っぷりも観れます。サブー、サンドマン、レイヴェン、シェーン・ダグラス*1あたりは本当に生き生きしていますね。オーラをビンビンに発しています。ECWは彼らにとってやりたいことのできる、楽しい仕事場だったんでしょう。ポール・ヘイマンはあまり選手に口出しはしないといっていましたが、個々の選手の魅力の引き出し方を知っていたんでしょうね。
 ECWの魅力はハードコアだけではなかったことも言及されています。才能あるルチャ・ドールの発掘、埋もれている実力派レスラーの発掘*2、メジャーでは、なかなかできないドキドキするようなストーリーと、後のWWFアティチュードやWCWに先駆ける新しいアイデアが満載です。ECWにはインターネットを駆使するプロレスマニアが集ったというのもうなずけますね。
 後半は没落していくヘイマンを描いています。興行が大きくなり、時代も進み、ECWも変革に迫られていたのに、ヘイマンはそれをしなかったことが原因として描かれています。ワンマン社長率いる中小企業が組織を上手く運用できずに崩れていく様は見ていて痛々しいですね。組織が大きくなると、仕事相手や視聴者は増える、そこに上手く、そしてゆっくりと適用することができなかった。ヘイマンは冷静になればそれができる人なのかもしれませんが、ずっと家族のようにハードコアレスラーと仕事をしていくうちにECWそのものに愛着を持ってしまったことが敗因なのかもしれませんね。(終盤でのECW所属選手とヘイマンの意見の食い違いが激しすぎて、切ない…。)
 ECW崩壊後、WWF入りするヘイマンですが、そこでも長期間独裁者であったことが災いして、上手く組織に適応できない様子が描かれ、しんみりしてしまいます。
 きっと鑑賞後は、あの暑っ苦しくて胡散臭いポール・ヘイマンが可愛く、いとおしく見えて仕方がなくなってしまうでしょう。プロレス史を知るという意味でも、組織運営やチームワークを学ぶという意味でも、非常によくできたDVDでした。これは激オススメ!
本編並みに長い試合中心のエキストラ映像のレビューはこちら

*1:特にシェーン・ダグラスのエピソードは熱い。アンチNWA、アンチ フレアーを標榜し、ECWを愛しまくる狂気の男です。この人があんまり大きく取り上げられなかったのは、やっぱりNWAをボロクソにけなしているので風当たりが強いからでしょうね。

*2:ティーブ・オースチンの発掘には時間が割けられていますが、基本的にオースチンのギャグはみんなスベっているようにしか見えない。たしかにWWFアティチュード時代のオースチンは神がかっていたけど、それ以前のオースチンまで神格化する必要はあるのかね?まあ、ヘイマンとオースチンWCW時代からの付き合いなので、愛着があるのはわかるけど。