ハウルの動く城

ハウルの動く城 特別収録版 1/24second付き [DVD]
 次に登った山の印象が強すぎて映画の印象が若干霞んでいるんですが、よかったです。久しぶりですね。宮崎アニメでワクワクドキドキ満足したのは。
 今回もネタばれは伏字にしていますので大丈夫です。
 印象は「千と千尋〜」のいいところだけ残したみたいな感じ。この感想は僕が「千と千尋〜」をまったく認めていないことを知っていたら、かなり微妙な感じを受けるかもしれませんが、僕は「千〜」の前半は認めているんです。ストーリー云々は抜きにして不思議な世界に迷い込んだ感覚が楽しかったじゃないですか。ハウルはこの感覚が二時間続いた感じです。エンディングは鬼のようなご都合主義っぷりを発揮していてちょっと不満でしたが、これは評価されてもいい作品だと思いましたよ。
 この作品を統一感のあるレビューでまとめるのは難しいと思います。作品自体に統一感がないと思いましたからね。でもこのゴチャゴチャ感は今回は悪くないと思います。とーきどき明らかに思いつきでやっている演出が観客を混乱させているんじゃないですかね。いい例が荒地の魔女でしょう。造形といいキャラクター像といい、美和明宏を出したいがためのキャラクターに見えてならなかったのは僕だけでしょうか。原作を読んでないので、よく知りませんが、「荒地の魔女は確か途中でいなくなってしまうんですよね。本作では最後まで残っているんです。そこで魔女の性格が途中からコロコロ変わっているんですよ。魔女が真の姿のなってから、突然物分りがよくなったと思えば、タバコをすってわがままっぷりを見せるという部分はまだいいんです。しかし、クライマックスで突然ハウルの心臓にこだわるシーン、困惑したのは僕だけではないはずです。魔女はそこまでバカではないでしょう。
 作品のテーマは「愛が奇跡を起こすってことと、もっとも報われるべきはなにげない小さな善行であるということですかね。」なんかこれも千と似ている感じがします。「愛に関しては恋をすると魔法が解けるという演出がさりげなく行われて好感だったのと、ハウルと恋に落ちる過程がちゃんと道理づけられていたのがよかったですね。
 作品の大部分が火の悪魔のいる暖炉で展開されていたのは好感。人間同士の交流が重要な本作では、非常に的確なスケールの小ささだと思います。もちろん、適度にド派手なアクションも展開されるので、観客は飽きることがありません。「冒頭のハウルとソフィーの散歩のシーン、動く城がバージョンアップするシーンは本当にワクワクします。これはお気に入り。
 これは主題と違うと思いますが、反戦メッセージも。「サリバン先生は実は荒地の魔女なんかをはるかにしのぐ大悪党なんですが、ハウルは彼女から逃げ切る(というか、見逃してもらう)ことで劇は終わります。無抵抗主義じゃなくて逃走主義といいますか。」これがあっさり上手くいってしまうところが、また"宮崎アニメは甘い"という烙印を押される所以かもしれません。
 声に関してはソフィーの賠償千恵子はやっぱりきつかったかなと。90歳のおばあちゃんとティーンの少女を交互に演じるのは本当に大変だったと思いますが、少女はさすがにきつかったぁ。なんらかの工夫が必要だったでしょう。木村拓也ハウルにばっちりマッチしていましたね。「ハウルの性格が発覚する以前と以後で声が違うのはあざといけどさすが。
 これまでの宮崎アニメをオマージュしたシーンがかなり多いです。これを見つけていくのも楽しいかもしれません。ハウルは子供向けのシーンや教育的なシーンも少なくないので、これは大人へのサービスでしょうか。
 音楽はのどかでよかったぁぁ。耳に残りますよ。口笛吹きたくなりますよ。