American Dreamz(2006)

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■ストーリー
 いま、アメリカで注目を集めている番組は「アメリカン・ドリームズ」。アメリカ全土からオーディションを行い、そこから選抜されたファイナリスト12名が番組でパフォーマンスを行い、優勝の座を争うのだ。
 番組のホスト、マーティン・トゥイード(ヒュー・グラント)は悩んでいた。番組はシーズンを重ねて、出場者もマンネリ化している。ここでひとつ、目新しいキャラクターをファイナリストに加えたいのだ。山ほどあるオーディションビデオから、異彩を放ち、マーティンを喜ばせる候補者はいた。
 イラクでゲリラをやっていた純朴な青年オマール(サム・ゴルザーリ)。何をやっても下手くそな青年は、幹部から見切りをつけられ、アメリカの親戚の下に送られる。ミュージカルが大好きなオマールは、本場のアメリカで暮らせることに大喜び。ひょんなことから、マーティンの眼に留まるのだが、オマールは歌も踊りも下手くそなのだ。そこにイラクからやってきた幹部達。彼らはマーティンに爆弾を渡してこういう。「決勝戦まで残って、自爆テロをしろ!」
 どどどど田舎をなんとか脱出したいと目論んでいるサリー(マンディ・ムーア)が、このチャンスを逃すはずがなかった。鬱陶しい彼氏も追い出したいし、失業者相手のウェイトレス生活もウンザリだ。彼女の武器は歌唱力と、世渡りの上手さ、そして、勝利のためならなんだってやってみせるガッツ!
 アメリカ合衆国大統領(デニス・クエイド)は悩んでいた。久しぶりに新聞を読んでみたら、社会は補佐官(ウィリアム・デフォー)の言ってることと全然違うのだ。イラク大量破壊兵器はなかったんだって。まじかよ!今まで、補佐官の言いなりになってたけど、なんだかそれだとおかしいぞ。よし、とりあえず、勉強しよう、引きこもろう。。。
 「アメリカン・ドリームズ」最大のハイライトは二人にしぼられたファイナリストによる最終審査。今回はゲスト審査員に大統領も参加する。俗物司会者、田舎娘、テロリスト、大統領が一同に会するとき、何かが起こる!

 ブラック・ジョーク満載だし、日本人には伝わりづらいローカルネタが多くて、きっと公開はないし、ビデオもないだろうなと思ってたら、この期に及んでDVD発売ですよ。
 大統領のモデルになった、新聞読めないブッシュさんは中間選挙で大敗してしまい、共和党内でも嫌われ者扱いされてますね。この映画が公開されたときの勢いがないのがない今、映画で無能キャラクターとして馬鹿にされてても、ちょっと張り合いがないかもしれない。
 ただ、実在の大統領と番組を堂々とパロディーにできるアメリカの懐の深さというのは感じられます。これだからこの国は面白い。
 マーティンの正直な俗物ホストぶり、サリーのむき出しの野心は見ていて心地よいくらいなんだけど、生でギラギラした元ネタのアメリカン・アイドルはきっと絶対に面白いんだ。日本じゃ放送されてないのは、これは残念至極。
 いい味を出しているのは、サリーにふられたショックでイラクに出かけちゃった彼氏のウィリアム。戦地に出かける前に骨折してしまってノコノコ戻ってくるんだけど、傷痍軍人という立場をサリーに利用され、よりを戻すけど、実は裏切られてることに全然気づかないおバカで可哀相なお兄さん。おとなしいけど情熱的で、純朴な体育会系というのは、映画にはなかなかでてこないけど、現実には結構います。不器用な男が流行らない今日この頃、ますます不遇の運命をたどるであろう彼らに、光明はあるのでしょうか。ポスト健さんみたいな人は出てこないのだろうか。男はだまってサッポロビールみたいな。
 ウィリアムもサリーも、今でこそくすぶっているけど、高校時代とか、クィーンビー&ジョックスのカップルだったりしたんだろうか。田舎で落ち着くことなんて考えられないサリーと、とにかくサリーと結婚できればいいやと考えてるウィリアムの意識の差は大きい。たしかにサリーの性格は最悪だけど、サリーと比べてもウィリアムは観客の共感を呼ばないなあという気はする。あと、マーティンとサリーに対する描き方から、監督の好みが彼らに大きく傾いているのがわかる。結果としてヘタレのウィリアムは幸せになれないわけだけど、下手に鈍感男が救われたりしない展開は正しい。
 俗物を愛する人が俗物番組と俗物を描いた素晴らしい映画です。ストーリーもまとまってるので、オススメ。もっと早くDVDができたらよかったね。