発狂する唇

発狂する唇 [DVD]
 いや、ホラーじゃないけどね。でもこんなエログロ映画、ホラーマニアのほかに誰が見るんだって狂いっぷりなのでとりあえずホラーに分類しました。音楽や映像の演出もホラーのそれだもんね。ただ、恐怖を期待するとことごとく予想を裏切ってきます。「見るぞ」って人は大体覚悟はできてると思うんだけど、ストーリーの破綻も奇怪な映像も投げやりな演出も全て狙われたカルト映画。高橋洋のノリについていけるかどうかが全ての映画です。好き嫌いがすごい分れそう!
■ストーリー(読まなくていいよ)

 倉橋家は娘二人に母親一人の女家族。親父は死刑で死んでおり、息子も殺人事件の犯人として失踪中。女子高生四人首切り殺人事件は半年前に起きたのだが、マスゴミとクソ刑事は執拗に倉橋家を取り囲むのであった。末っ子の里美(三輪ひとみ)は兄の無実を信じて怪しい霊媒師に助けを請うことに。笑ってばかりで胡散臭さ爆発の霊媒師と色欲全開の変態助手に色々迷走させられ物語そのものの展開も危うくなるも、そこには国家権力の影が見え隠れしていたのであった。里美にもFBIの手が…。

 
 笑えれば勝ち、不快に思えば負け。なんじゃこりゃと疑問に思っても負け。とにかく狂ってぶっ飛んでるといったら、ちょっと食いつきたくなる人も多いと思うけど、いかんせんアクが強いから期待しすぎないように。でも、僕が今まで観てきた『悪魔の毒々モンスター』や『死霊のしたたり』とはちょっと毛色の違うカルトなのでこれはこれで一見の価値があります。
 以前見た『牛頭』もそうなんですけど、本作もわざとテンポをずらしたナンセンスな雰囲気が全体を占めてるんですよね。変な人はいっぱいでてくるんだけど狙いすぎてのれない。とりあえずアクのある登場人物が大量に出てくるコメディー漫画の末期症状にも似た感があります。こうなると『フライパン殺人』のように脱力系を狙うのかと思いきや、随所にキレのある場面も出てくるから侮れない。狙いすぎの三輪ひとみ雑巾がけのシーンや前後の文脈をたたっきる三輪ひとみ歌謡ショー(音痴)など、結構好きなシーンは多いんです。里美が行く先々でゲロを吐く理由が明らかにされるシーンは笑いました。
 ちょっとこじんまりとしてますが、パワーもあるし、潔さもあります。ほとんど動かないカメラも、昭和の色を強く感じさせる音楽もいい味を出しているんです。静止画が多いためにシュールで笑える絵が随所に出てくるし、ナンセンスな雰囲気を引き立てています。音楽もなぜかトンチンカンな雰囲気に合ってるんですよね。ケレン味と怪しさの入り混じった雰囲気が昭和のドラマや映画に付随していたということでしょうか。音楽がネタを並べただけで破綻だらけのストーリーを全て許せてしまう効果を導き出していると思っているのは僕だけでしょうか。
 問題は下ネタがつまんないことでしょう。B級カルトに無意味なセックスシーンが混ざるのはお約束ですが、ちょっと多すぎだし、どれも長いしたるいですよ。最初こそ倉橋家が間違った方向に進んでいることを示す効果的な使用法がなされてましたがアレンジして何度も繰り返すのはいかがなものかと。
 しかし、三輪ひとみは美しかった。基本的にいつも画面のど真ん中にいて目立ってるので、三輪ひとみを見るだけでも本作借りる価値あり。困った顔が最も美しい子は今どき希少な存在ですね。最近の女優、アイドルを見てもそうそういない。市場価値がないんでしょうか。二時間ドラマも元気ないしね〜。だからなのでしょうか、カルトの女王に君臨したのは面白い選択でしたね。しかし、なぜこの人はいつも鼻声なのか。